ECサイトでのAI活用方法とは?
導入メリットや注意点も解説!

ECサイトでのAI活用方法とは

ビジネスにおけるAI活用が急速に広まり、ECサイトにおいても顧客体験向上や業務効率化を実現するために利用され、多くの企業が成果を上げています。AIは大量のデータ分析を得意とし、パーソナライズされたレコメンドやダイナミックプライシングなど、従来の手法では困難だった施策を可能にします。また、「プロンプト」と呼ばれる文章を入れると文章や画像を自動的に作る「生成AI」の登場は、クリエイティブ分野における効率化や品質改善を実現しました。

この記事では、ECサイトの運営にかかわる方に向けて、ECサイトでAIを導入するメリットや活用方法、および2025年時点でのAI利用の注意点について解説しております。ぜひお役立てください。

1.AIとは

AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、人間の脳の仕組みをモデルに、コンピュータプログラムが膨大なデータをもとに自ら学習し、判断・予測を行う技術のことです。AIには特定の業務に特化して高い性能を発揮する「特化型AI(弱いAI)」と、人間のように幅広い問題に対応できる「汎用型AI(強いAI)」がありますが、人類はまだ汎用型AIを発明できていない状況です。したがって、現在使われているAIサービスはすべて特化型AIです。

特化型AIは、特にニューラルネットワークやディープラーニングといった技術が中心となっています。ニューラルネットワークとは人間の脳の神経細胞(ニューロン)を模した機械学習技術であり、AIが人間の脳のように推論を行うことを可能とします。また、ディープラーニングは、ニューラルネットワークをさらに発展させ、AIが自動的にデータの重要性を判断し、高度な推論を行えるようにした技術です。

さらに近年では、「プロンプト」と呼ばれる自然言語による指示により、文章や画像を生成する「生成AI」が注目されています。

2.ECサイトでAIを活用するメリット

AI技術の進歩は、これまで人間しかできなかったさまざまな業務領域も含めて、自動化・効率化できる可能性をもたらしました。特に、大量のデータが自然と蓄積されるECサイトは、AIとの相性がよい特徴があります。

以下の動画では、AIレコメンドを活用した売上拡大やコスト削減の手法を具体的な事例を交えて解説しています。ぜひご覧ください。

事例でわかる!EC売上を最大化する”攻めのAI活用”とは

2-1.顧客体験(CX)を向上できる

AIの導入によって、ECサイトにおける顧客体験(CX)を大きく向上できます。顧客ごとの購買履歴や閲覧履歴、興味関心データを活用し、顧客の好みに合った商品をレコメンドしたり、問い合わせへの回答を自動化したりするのは、AIが得意とする領域です。

パーソナライズされた購買体験により、顧客満足度やロイヤルティが向上し、競合サイトとの差別化にもつながるでしょう。

企業にとってCXを向上させることは、リピート顧客の獲得や業績アップにつながるため、重要度の高い課題といえます。顧客体験(CX)については以下の記事でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

2-2.業務の効率化・コスト削減につながる

AIを活用すれば、手作業に頼っていた大量のデータ処理や分析を自動化し、人為的なミスを大幅に減らせます。たとえば在庫管理業務においては、販売データをリアルタイムで分析することで最適な在庫量をAIが自動で算出したり、特定商品のセール情報を通知するメール配信のターゲット選定を自動化したりすることが可能です。

ヒューマンエラーが発生しやすく、手間のかかる単純な業務を自動化すれば、スタッフは人間にしかできない「施策の立案」に時間を割くことができるようになります。加えて、労働時間を削減できるので、これまでかかっていた残業代などのコストを減らせて、長期的に見て収益性を改善できるのもメリットです。

2-3.データ分析を高度化し予測精度が上がる

AIによる高度なデータ分析はECビジネスにおける意思決定を助けます。ECサイトに蓄積される膨大なデータをすべて人間がチェックするのは、かつてはヒューマンリソースに限界がある関係上困難でした。その点、AIを活用すれば短時間で大量のデータを正確に分析し、顧客の行動パターンや購買傾向などの複雑な情報から有益なインサイトを導き出すことができます。

データをベースにした高度な予測や施策は、競合が激化するEC市場で優位性を確立するために不可欠な要素です。そのため、最新のBIツール(ビジネスインテリジェンスツール。ビジネスで使用するデータを分析し、経営判断に役立てるツールのこと)の多くはAIを搭載して、意思決定を支援する機能を強化しています。

3.ECサイトにおけるAIの活用方法

ECサイト運営においても、AIを活用することで、顧客体験の向上や業務効率化、売上拡大などにつながるさまざまな施策を打つことができます。

AIを使ったさまざまなツールを活用して、より良い形にサイトを変革する施策の代表例には以下があります。

3-1.チャットボットを使った接客の自動化

ECサイトにAIを活用したチャットボットを導入することで、カスタマーサポートの自動化が可能になり、顧客満足度の向上と運営側の業務負担軽減を同時に実現できます。

AIチャットボットは、顧客が入力した質問内容に対し、状況に応じた最適な回答を自動で返すことが可能です。24時間365日、リアルタイムで顧客サポートができ、顧客の待ち時間を減らせます。加えて、オペレーターのスキルによって対応品質にムラが生じることもなく、常に安定したサービスを提供できる点もメリットです。

さらに、やり取りを通じて蓄積される顧客データを活用すれば、購入意欲の高い顧客に関連商品や限定キャンペーンの案内を行い、アップセル・クロスセルにつなげられます。

以下では、Web接客ツールの導入をご検討される方に向けて、Web接客の概要や動向、導入するメリット、Web接客ツールの選び方について解説しています。ぜひご覧ください。

3-2.パーソナライズされたレコメンドやコンテンツの提供

ECサイトに訪れた顧客の情報を分析するAIを導入することで、パーソナライズしたレコメンドやコンテンツを提供可能です。たとえば、顧客が過去に購入した商品や閲覧したカテゴリの中から、興味関心に最適な商品をAIに判定させ、自動でレコメンドするといった方法が挙げられます。

ほかにも、AIを活用したサイト内検索ツールは、検索履歴をもとに顧客の意図を先読みした関連性の高い検索結果を提示する機能を備えています。ユーザーが欲しい商品を素早く見つけられ、離脱率の改善につながるでしょう。

さらに、AIを活用したターゲティング広告の最適化を行うことで、顧客の属性や関心に基づく効果的な広告を表示できるようになります。

以下の記事ではパーソナライズの必要性について解説しています。ぜひご覧ください。

また、ECサイト構築プラットフォームの中には、AIを活用したサイト内表示のパーソナライゼーションやレコメンド機能を標準で備えたサービスもあります。たとえば、Salesforce B2C Commerceは、AIを活用した顧客データ分析機能があるツールの1つです。

altcircleは「Salesforce B2C Commerce伴走支援サービス」として、ECシステムの構築からマーケティング施策の実行・分析・改善までをトータルで伴走支援する導入・運用サービスを提供しています。Salesforce B2C Commerce伴走支援サービスについては以下のプレスリリースをご覧ください。

3-3.ダイナミックプライシング

ダイナミックプライシングとは、需要や競合企業の販売価格、自社の在庫数などの要因に応じて商品の価格を変動させ、収益を最大化する手法です。

膨大なデータをチェックして値付けをする必要があるため、人間が行うダイナミックプライシングは最適化が難しい場面が多くありました。一方、AIを活用すれば過去の販売実績や競合の価格、天候など膨大なデータを瞬時に分析し、リアルタイムで最適な価格を算出することが可能になります。

AIを使ったダイナミックプライシングは、ホテルや航空業界、テーマパークなどで導入が進んでいます。ECサイトでも数多くの在庫を一括管理し、価格を柔軟に変更するダイナミックプライシングを取り入れることで、売上拡大や在庫ロス削減が期待できます。

また、顧客の閲覧履歴や購入傾向を踏まえて値上げ・値下げ価格を提示できる点も大きな強みです。たとえば、お得意様には値引きするといったこれまでECサイトでは実現が難しかったサービスも、AI活用により提供できるようになります。

3-4.ECサイト上のコンテンツの生成

ECサイトでは取扱商品が多くなるほど、商品説明文やブログ記事、キャンペーン用バナー画像などを大量に作成する必要が生まれます。生成AIはクリエイティブのたたき台になる文章や画像を簡単に短時間で作成できるため、コンテンツ作成の時短に役立つツールです。

活用例としては、商品情報やキーワード、商品データを入力して、商品紹介文を自動生成するといった方法が挙げられます。また、FAQやメールマガジンの本文などもAIで自動生成し、担当者が最終的な調整や修正を行えば、作業時間を大きく短縮できます。大量のアイデア出しなども可能で、クリエイティブのA/Bテストやブレインストーミングの材料としても使用可能です。

さらに、画像生成AIを活用すれば、既存の商品画像のデザインや配色を変更したり、さまざまな商品を組み合わせたコーディネート写真を生成したりして、簡単に商品の利用イメージを生成できます。

altcircleでは、ECサイト上で再現性の高いバーチャル試着を可能とするパーソナライズドスタイリングサービス「MIM(My Image Model)(ミム)」を2024年10月1日から提供開始いたしました。

MIMは、ECサイト上に消費者の属性情報や雰囲気などの特徴を反映した「マイモデル」がアパレル商品を着ることでバーチャル試着を可能とするだけでなく、消費者の特徴に合わせた全身のコーディネートを画像で提案するレコメンド機能が搭載されたサービスです。

本サービスにより、アパレル事業者の運営するECサイトの売上向上とモデル着用画像の撮影負荷を軽減し、コスト削減を実現します。

次世代型パーソナライズドスタイリングツール「MIM」については、以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

【アパレルECにおける次世代の購買体験】画像生成AIを活用したバーチャル試着とは

3-5.不正な取引の検知

ECサイトに対するサイバー攻撃やクレジットカード不正利用は、年々増加傾向にあり、手口も巧妙化しています。そのため、経済産業省は不正な取引を防止することを、EC事業者をはじめとしたすべてのクレジットカード決済を利用する事業者に義務付けています。

ECサイトにおける不正取引を未然に防ぎ、顧客の信用とビジネスの安全性を確保する方法として注目されているのが、AIを活用した不正検知ツールです。AIは過去の取引データやクレジットカードの使用履歴、アクセス元の情報などを学習し、リスクの高い取引にはどういった傾向があるのか判定できます。決済時点でリスクが高いと判定された取引には、自動的に追加で認証を課したり、取引自体をブロックしたりする仕組みです。

従来のルールベースによる監視では、新たな詐欺手口への対応に追われがちでした。AIは日々のデータ分析を通じて自動的に精度を向上させるため、多様化する不正手口にも柔軟に対処可能な点が強みです。

4.【2025年最新】ECサイトにAIを導入するときの注意点

AIは利便性の高い技術ですが、現在は発展段階にあります。AIの急速な進歩に法規制が追い付いていないと指摘する意見も存在しており、特にEU圏では厳しい法規制が行われている状況です。特に越境ECでは、消費者の個人情報を取り扱う際にEUのAI規制法に抵触しないよう注意し、場合によってはAI導入を避ける判断が必要になります。

日本でも、2025年に入り、有識者会議による「AI基本法」制定の検討や、独立した第三者機関によるリスク監査制度が議論され始めています。現時点ではEUほど厳しい罰則を設ける動きは見られないものの、AIの学習データの透明性確保や責任所在の明確化などの方針が示されており、事業者も将来的に新しいルールへの対応が求められるでしょう。

また、生成AIのハルシネーション問題はまだ解決していません。ハルシネーションとは、AIがデータを生成する際に、誤情報や実在しないデータ、誤解を招く表現を生成する問題を指す言葉です。誤った情報を掲載したままだと、顧客体験を損なうだけでなく、ブランドイメージにも悪影響を及ぼします。したがって、生成AIを導入するにあたっては、必ず人間によるチェックを挟むのが重要です。また、ユーザーへの案内として「AI生成コンテンツである旨」を明示し、利用規約やプライバシーポリシーにAI活用の旨を追記するといった形で、透明性を高めましょう。

加えて、生成AIの著作権も課題です。生成AIはインターネット上のデータを学習しているため、生成した画像が特定の著作物に似通う恐れがあります。文化庁は以下のような形で、生成AIによる著作権侵害を防ぐようにすすめています。

「侵害物の生成に用いられた生成AIによる新たな侵害の予防に必要な措置」としては、例えば、
① 特定のプロンプト入力については生成をしないといった措置(入力のフィルタリング)
② 当該生成AIの学習に用いられた著作物の類似物を生成しないといった措置(出力のフィルタリング)
……のような、生成AIに対して技術的な制限を付す方法などが考えられます。

5.まとめ

AI技術は今後さらに進化し、ECサイトにおいては新たな顧客接点の創出や高度な分析機能の実現など、ビジネス価値を一層高める可能性を秘めています。しかし同時に、信頼性の確保や法的リスクへの対応といった課題も避けて通れません。

特に生成AIを用いたコンテンツは、自由度の高さゆえに誤情報や著作権侵害を生みやすい側面があります。AIの持つリスクとどのように向き合い、透明性を維持しながら顧客満足を高めるかが、今後のEC戦略のカギとなるでしょう。

いずれにしても、AI活用には前提としてデータ活用が欠かせません。altcircleでは、各種データの収集・分析・活用までサポートし、お客様の売上向上に貢献するECプラットフォームを提供しています。altcircleのECプラットフォームサービスについては、以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。