動画マーケティングとは?
EC事業者向けの手法や成功事例を紹介!
インターネットの普及によってパソコンやスマホの使用が一般的となった近年、企業の集客や売上向上に向けた施策において「デジタルマーケティング」は欠かせないものとなりました。デジタルマーケティングには多種多様な手法がありますが、中でも幅広い表現ができることで特に注目されている手法が「動画マーケティング」です。
ただし、動画マーケティングと一口に言ってもさまざまな手法があるため、目的やターゲット層に応じて適切な手法を選ぶことが重要です。
この記事では、ECサイトを運営している企業のマーケティング責任者や経営企画・営業企画・営業推進の担当者者に向けて、動画マーケティングの概要から成功事例までを解説します。ぜひお役立てください。
1.動画マーケティングとは
動画マーケティングとは、動画を活用したマーケティング手法です。テキストや音楽を組み合わせた動画で企業や商品の魅力を伝えることで、ブランドイメージや認知度の向上、顧客の獲得を目指せます。
デジタルマーケティングに分類されるマーケティング手法であり、目的の設定からターゲティング、市場調査、効果分析・改善まで行うのが一般的です。デジタルマーケティングについては以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
1-1.動画マーケティングが注目される背景
動画マーケティングが多くの企業に注目されている背景としては、まず「動画市場の拡大」が挙げられます。
株式会社サイバーエージェントが発表した調査データによると、2027年には動画広告の市場規模が2022年の約2倍の規模に達することが予測されています。日本国内における動画マーケティング市場は今後も高い水準の成長を維持すると言えるでしょう。
また、各種SNSの利用率が高まっていることも、動画マーケティングが注目される理由の1つです。近年では、動画コンテンツを中心とするSNSの人気度が特に高まっています。総務省が発表した「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、動画コンテンツをメインとするYouTubeとTikTokの利用率は下記の通りです。
各種SNSの利用率(全年代)
YouTube(ユーチューブ)
87.1%
TikTok(ティックトック)
28.4%
YouTubeは年代を問わず利用されており、コミュニケーションアプリとしての側面が強い「LINE」に次いで高い利用率を誇っています。
TikTokはYouTubeと比べて利用率は低いものの、10代では約66%、20代では約48%のユーザーが利用しており、若年層へのアプローチに最も適したSNS媒体と言えるでしょう。
2.動画マーケティングのメリット
動画マーケティングには、テキストベースで情報を発信するその他のマーケティング手法とは異なるメリットが豊富にあります。
ここからは、EC事業者が動画マーケティングを導入することで得られる代表的なメリットを3つ解説します。
2-1.顧客に認知されやすい
動画広告はバナー広告と比較して、顧客に認知されやすいことが分かっています。これには、動画がもつ膨大な情報量が大きく関係します。
テキスト・画像ベースの広告が一般的であった従来のバナー広告は、ユーザーの視覚を刺激できても聴覚には訴えかけられず、印象を残せる度合いには限界がありました。
一方で、映像・音楽・ストーリーなどの要素で表現できる動画広告は、目と耳の両方で情報を得られることから内容が理解しやすく、記憶にも残りやすいというメリットがあります。
また、一説によれば1分間の動画は180万語・Webサイト3,600ページ分の情報量と同等と言われています。たとえ1分未満の短尺動画であっても、広告を見たユーザーに情報を印象深く残せるでしょう。なお、動画広告だけでなく、動画を活用したコンテンツ全般も同様に認知されやすいと言えます。
2-2.多様なプラットフォームで配信できる
動画広告は、古くからあるTVCMだけでなく、YouTubeや各種SNS、デジタルサイネージ、タクシー広告などさまざまなプラットフォームで配信できます。
また、SNSやデジタルサイネージ、タクシー広告のプラットフォームで動画広告を出稿する場合、TVCMよりも低予算で済む点がメリットです。
加えて、配信ターゲットを絞れば自社が理想とするターゲット層により効率よく広告を届けられることから、近年ではTVCM以外のプラットフォームで動画広告を出稿するケースが増えています。
2-3.静止画に比べコンバージョンしやすい
動画は静止画に比べてコンバージョンにつながりやすい点も大きなメリットです。
実際にMeta社が実施した調査によると、動画広告と静止画広告を併用して配信したブランドは、静止画広告のみを配信しているブランドと比較してコンバージョン率が17%向上したことが報告されています。
ユーザーの視覚と聴覚を刺激できる動画広告は認知拡大のほか、購買行動の後押しにもつながることが分かります。広告だけでなく、動画を活用したコンテンツ全般も同様に行動を引き起こしやすいと言えるでしょう。
3.動画マーケティングのデメリット
EC事業者が動画マーケティングに取り組むことには、メリットだけでなくデメリットもいくつか存在します。しかし、それぞれに応じた対策を講じることで回避も可能です。
ここからは、動画マーケティングのデメリットを3つ紹介します。動画マーケティングの実施におけるボトルネックを解消するためにも、しっかりと把握しておきましょう。
3-1.一定のクオリティが必要になる
動画広告は、従来のバナー広告や静止画広告と比較して広告を見たユーザーの印象に残りやすい点がメリットですが、映像・テキスト・音楽が組み合わさっていれば無条件でマーケティング効果が得られるわけではありません。
当然ながら、一定以上のクオリティがなければ視聴者の興味を惹くことができず離脱を招いてしまいます。また、あまりにもクオリティが低い動画は、企業ブランドのイメージを損なう可能性がある点にも注意しなければなりません。
ユーザーの興味を惹く効果的なマーケティング動画を制作するためには、各種機材の準備・使用および企画の構成・演出・演技・編集を担当する人材がそれぞれ必要です。
3-2.効果検証や改善にノウハウが必要になる
マーケティング用動画を継続的に投稿し、収集データを分析しながら改善していくためには、効果検証のスキル・ノウハウが欠かせません。
広告を含む動画コンテンツの効果測定に必要な評価指標には、表示回数・視聴回数・視聴率・完全再生率・クリック率・コンバージョン率などが挙げられます。これらの項目は個別に見るのではなく、目的別にKPIを分類して計測することが大切です。
データ分析のノウハウがなければ、広告の運用目的がどの程度達成されたか把握できないだけでなく、取得データに基づく問題の発見や施策の改善もできません。
収集したデータを判断基準に置いたマーケティング手法を「データドリブンマーケティング」と言います。データドリブンマーケティングについて以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
3-3.コストが高くなりやすい
前述の通り、ユーザーの興味を惹くクオリティの高い動画コンテンツの制作には、各種機材の準備や企画構成・動画編集などを担当する人材が必要です。加えて、必要な評価指標を計測・分析して改善を図るには、動画マーケティングに関するスキル・ノウハウを有する人材も欠かせません。
こうした人材がすべて揃っている企業は少なく、足りないスキルを補うために動画制作会社や動画マーケティング会社への外注を選択するケースが多くなっています。
しかし、動画マーケティングを外注する場合はコストが高くなりやすい点に注意が必要です。外注する範囲や外注先が示す料金形態によって費用は大きく左右されるものの、1分間のサービス紹介動画の制作を依頼する場合は最低でも「数十万円以上+広告費」がかかると考えておきましょう。
4.【EC事業者向け】動画マーケティングの主な手法
動画マーケティングと一口に言っても、その手法はさまざまです。手法によって情報を発信できるターゲットや適切な構成、さらに期待できる効果が異なります。
動画マーケティングで求める効果や自社の状況に応じて最適な手法を選択するためにも、ここから紹介する動画マーケティングの具体的な手法5つを把握しておきましょう。
4-1.動画広告の出稿
動画マーケティングの最も代表的な手法が、動画広告の出稿です。主に企業や商品・サービスの認知度向上に有効な手法であり、YouTubeをはじめとした各種SNSアプリやWebサイト上で配信されています。
動画プラットフォームによってユーザー層や適切な尺は異なるため、それぞれ特徴を踏まえて配信先を選ぶのが重要です。プラットフォームによっては動画広告を一定時間強制的に閲覧させることも可能で、多くのユーザーに企業や商品・サービスを認知してもらえます。ただし、動画の内容やクオリティによっては嫌悪感を抱かれる可能性もある点に留意しておきましょう。
なお、SNSの場合はユーザーの年齢・性別・興味関心といった属性に応じた広告配信が可能で、顕在層はもちろん滞在層にもアプローチできます。
4-2.SNSへのショート動画投稿
近年では、自社で運用する各種SNSのショート動画機能を活用して動画コンテンツを配信するケースも目立っています。
ショート動画とは、縦型・短尺の動画コンテンツのことです。主にスマホユーザー向けに配信されるコンテンツであり、特にTikTokやInstagram(リール動画)、YouTube(YouTube ショート)はショート動画の投稿が活発となっています。
ショート動画は数十秒~1分間という短さからユーザーに受け入れられやすく、スマホ画面に臨場感のある映像が映ることから広告としてではなく1つのコンテンツとして認識するユーザーも多い点が特徴です。
加えて、ショート動画を投稿できるSNSは拡散力が高く、一度でも投稿が話題になれば広告費をかけずにより多くのユーザーへコンテンツを届けられるようになります。
4-3.YouTubeチャンネルの運営
認知度の拡大・コンバージョン率の向上につながる動画マーケティングの手法として、YouTubeチャンネルの運営も注目されつつあります。
YouTube以外のSNSでも動画コンテンツを配信することは可能です。しかし、自社アカウントでYouTubeチャンネルを開設すれば、長さを気にせず動画を配信でき、企業の世界観や商品の魅力を自由に表現できます。
YouTubeに参入した企業のよくある活用例が、「実際に商品を使用しながらの商品紹介動画」です。商品のより詳しい魅力や実際の使用方法などを伝えることで、ユーザーは商品理解をさらに深められ、新規顧客の獲得・顧客ロイヤルティの向上につながります。
4-4.動画コマース
商品・サービスの購買行動の後押しとして有効な動画マーケティング手法としては、動画コマースが挙げられます。動画コマースとは、商品リンクが埋め込まれた動画から、商品を直接購入できるシステムです。
動画に表示された商品を「ほしい」と思ったユーザーは、動画内リンクをクリックするだけで商品購入ページへと瞬時にアクセスできます。ECサイトにアクセスして目当ての商品ページを探すという煩わしいステップを省けるため、購入意欲が薄れることによる離脱を最大限防げます。
動画コマースと混同されやすいものに「ライブコマース」が挙げられます。ライブコマースとは、SNSなどのライブ動画配信サービスを利用して、配信者と視聴者の双方がリアルタイムでコミュニケーションをとりながら商品を紹介・販売する手法です。
配信者の影響力でエンゲージメント率が左右されやすいほか、リアルタイムで視聴者を集める必要があるため、動画コマースよりも難易度は高いと言えるでしょう。ライブコマースについては以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
4-5.インフルエンサーマーケティング
認知度の拡大・コンバージョン率の向上に貢献する動画マーケティングの手法としては、インフルエンサーマーケティングが挙げられます。
インフルエンサーマーケティングとは、特定の領域・分野で高い影響力を有するインフルエンサーを起用し、主にSNS上で自社ブランドや商品・サービスをPRしてもらう手法です。
認知度の拡大を目的とする場合はフォロワー数が多く発信力の高いインフルエンサーに依頼する手法が有効です。コンバージョンを目的とする場合は商品・サービスのターゲットとなる視聴者層が主なフォロワー層となるインフルエンサーに依頼するとよいでしょう。
ただし、いずれにおいても露骨なプロモーション動画は嫌悪感を抱かれる傾向にあるため、企画には工夫が必要となります。
5.動画マーケティングで押さえておくべき「HHH」とは
EC事業者が動画マーケティングに取り組む際は、Googleが提唱している「HHH」という戦略を押さえておきましょう。
HHH戦略とは、「H」の頭文字から始まる「Hero動画」「Hub動画」「Help動画」の3つの動画を適切な場所とタイミングで配信することで、大きな成果につながる動画マーケティングを展開できるという考え方です。3つの動画の特徴は、下記の通りです。
Hero動画
企業の認知度・知名度を高めることを目的とした動画です。潜在顧客である幅広いユーザーに向けて、自社のブランドや商品・サービスを発信し、話題性を提供します。
Hub動画
商品・サービスに興味をもった見込み顧客に向けてさらなる魅力をアピールし、コンバージョンにつなげることを目的とした動画です。紹介する商品・サービスのこだわりポイントや差別化ポイントなどが主な内容となります。
Help動画
実際に商品を購入・利用している顧客や、今後顧客になり得るユーザーに向けて、使い方の解説やトラブル対処法などの顧客サポートを目的とした動画です。認知拡大やコンバージョンを狙ったコンテンツではなく、顧客との結びつきを強めるためのコンテンツと言えます。
6.EC事業者の動画マーケティング成功事例
EC事業者が動画マーケティングを成功させるためには、動画マーケティングに成功した実際の企業事例を参考にするのも大切です。最後に、衣料品メーカー・家具メーカー・総合化学メーカーによる動画マーケティングの成功事例を紹介します。
6-1.ECサイト上に商品紹介動画を掲載|衣料品メーカーK社
上質な素材と日本の卓越した裁縫技術を用いたビジネスシャツの製作・販売を手がける衣料品メーカーK社は、Instagramのライブ配信機能で実施しているライブコマースを刷新しました。
ライブ配信後は接客動画をアーカイブ配信し、自社ECサイト上でも動画を視聴できるようにしたほか、ライブ動画が埋め込まれたページ上には動画内で紹介されている関連商品を表示させて商品購入までの導線をつくりました。
また、接客動画は超長尺となるため、関連商品画像の下にはその商品の紹介場面まで動画をスキップできる時間タブも設置しています。ユーザーは気になる部分のみを効率よく視聴することが可能です。
こうした取り組みによって、一度でも商品に興味をもってくれたユーザーの離脱防止や顧客ロイヤルティの向上に貢献しています。
6-2.動画内で紹介した商品を即購入可能|家具メーカーN社
家具・インテリア用品の企画・販売を手がける大手家具メーカーN社は、次世代動画技術「TIG(ティグ)」を活用し、直感的なコマース体験を実現しました。
TIGとは、パロニム社が開発した次世代型動画技術で、視聴中に動画内のアイテムや人、場所などに触るだけで、瞬間的に触れたものの情報をストックできる最新テクノロジーです。
従来の動画では、気になる商品や情報を見つけるために検索キーワードを考え、膨大な検索結果から該当商品を探し出す手間があり、ユーザーの離脱を招いていました。TIGの導入によって、ユーザーは視聴中・視聴後など自分のタイミングでストックした商品の詳細ページへダイレクトにアクセスでき、購入までの手間を大幅に省けます。
家具メーカーN社のこの取り組みは、ユーザーエクスペリエンスの向上・顧客の離脱防止・売上拡大に大きく貢献しました。
6-3.ターゲットごとに訴求内容を変更|総合化学メーカーK社
あらゆる分野の生活用品の製造・販売を手がける総合化学メーカーK社は、ヘアケア商品の発売とともに、「シャンプーEC市場のシェア獲得」を目指して大手総合ショッピングモールや大手SNSと共同でマーケティング施策を展開しました。
「データは事業拡大のカギを握る」という考えのもと、外部プラットフォームの「購買データ」を活用し、ターゲットやクリエイティブを絞り込んだマーケティングを実施しました。
商品紹介動画では、5つのシリーズごとにターゲットを細かく示し、それぞれ訴求内容を変えています。加えて、複数パターンのクリエイティブ作成・ABテスト実施を行い、効果検証・改善を繰り返した結果、売上は約2倍に上昇しました。
さらに、K社は顧客のデータ分析に際して、顧客のニーズを踏まえ、一人ひとりの顧客に対して最適なコミュニケーションを行う「1to1マーケティング」を導入しました。パーソナライズで消費者ごとにアプローチ方法を変更することで、顧客満足度のさらなる向上にもつながっています。パーソナライズの必要性については以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
7.まとめ
動画マーケティングとは、動画を活用したマーケティング手法のことです。映像・テキスト・音楽が組み合わさった動画コンテンツは、ユーザーの視覚と聴覚の両方に訴えかけられるため、近年多くの企業に注目されています。
EC事業者が動画マーケティングを導入することにはメリットとデメリットの両面があるものの、デメリットはあらかじめ対策を講じれば回避できます。この記事で紹介した事例も参考に、ぜひ動画マーケティングに挑戦してみましょう。
altcircle(オルトサークル)では、EC事業を展開する企業様に向けて、動画マーケティングをはじめとしたマーケティング戦略に関する幅広いサポートを提供しております。「動画マーケティングによって自社のECサイトの収益や認知度の向上を図りたい」と考えている企業担当者様は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。