製品・設備の保守業務を効率化する方法は?
アフターサービスのDX化のポイント

製薬分野におけるRWDとは

メーカーの製品・設備に関する保守業務では、ベテランへの依存や人手不足、紙での作業報告など、効率化に向けた課題を抱える現場が少なくありません。近年は、アフターサービスのDX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)によって保守業務を効率化し、対応品質の向上、顧客満足度の向上、継続収益の拡大につなげる企業が増えています。ただし、目的を決めないままツールを導入しても、成果にはつながりにくいのが実情です。

この記事では、製品・設備に関する保守業務の効率化を検討している方へ向けて、保守業務の課題やDXでの解決方法、活用できるツール、成功する企業の進め方について解説します。ぜひお役立てください。

1.製品・設備のアフターサービスにおける保守業務の重要性

アフターサービスとは、製品・設備の導入後に提供する、問い合わせ対応や点検、修理、メンテナンスなどのサポート全般を指します。その中でも特に保守業務は、売上を支えるだけでなく、今後の事業を伸ばすヒントが多く隠れています。以下で、競合との差別化や顧客満足度、収益の面から、保守業務が重要とされる理由を解説します。

1-1.製品・設備単体では競合との差別化が難しいため

アフターサービスの保守業務が重要とされる理由の1つは、製品・設備そのものでの差別化が難しくなっているためです。類似した製品や設備が数多く出回る中で、内容だけで競合他社と差をつけるのは年々難しくなっています。価格を下げ続ける競争にも限界があり、多くの企業は製品以外で高い付加価値を生み出す方向へ移行しつつあります。

強みになるのが、充実したアフターサービス体制です。対応品質やスピード、サポート内容を高めれば、価格競争から一歩抜け出せます。保守業務は顧客との重要な接点であり、対応の質は顧客満足度や継続利用を左右する要素です。品質の高いサポートは解約率の低下につながり、結果としてLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上にも貢献します。保証延長や定期点検契約は、新たな収益モデルを築く手段にもなります。

1-2.保守業務を通じて顧客満足度と信頼を高められるため

保守業務は、顧客満足度と自社への信頼感を高められる重要な顧客接点です。近年は、製品購入後のサポート体制や保守対応の品質を、購入・継続利用の判断材料として重視する顧客が増えています。製品の不具合やトラブルは顧客体験を損なう要因になり得ますが、迅速かつ適切に対応できれば、信頼回復や関係強化の機会にもなります。大切なのは、顧客が何を求めているかを明確にし、顧客のニーズに応えられる対応体制を整えることです。

購入後のフォローやメンテナンスは、顧客の安心感を支え、満足度を高めます。迅速で丁寧な対応を重ねると、顧客ロイヤルティが高まり、長期利用やリピート購入、解約率の低下につながります。よい評判が口コミやブランド評価に広がる点も、大きな効果です。さらに、問い合わせ履歴や修理履歴などの保守データは、顧客理解やサービス改善にも役立ちます。

1-3.安定した収益を生むストックビジネスになるため

保守業務が重要とされる3つ目の理由は、安定した収益を生むストックビジネスになる点です。製品を販売して終わるフロー型ビジネスと異なり、有償の保守契約や定期点検、メンテナンスは、契約形態によって継続的な収益源になります。定期メンテナンス契約やサブスクリプション型の保守サービスを整えれば、継続的な収益を生む仕組みを展開しやすいでしょう。

定期契約やサブスクリプション型の仕組みは、新規顧客の獲得だけに頼らない、安定した収益モデルへの移行を後押しします。景気や新規販売の波に左右されにくく、経営の安定にもつながる点が強みです。適切な保守対応を継続することで解約リスクを抑え、LTVの向上にもつなげやすくなります。契約件数や更新時期を把握できれば、将来の売上を見通しやすくなる点もメリットです。

2.製品・設備の保守業務によくある課題

製品・設備の保守業務は、顧客満足度や継続的な収益を支える一方、現場では効率化を妨げる課題も生じやすい業務です。以下で、保守業務を効率化する前に把握しておきたい、現場で起こりやすい課題を解説します。

2-1.業務が属人化・暗黙知化しやすい

保守業務は、ベテランや業務に詳しい一部の担当者の経験や勘に頼りやすく、属人化・暗黙知化しやすい仕事です。長年の対応で培ったノウハウが個人の中に蓄積され、マニュアルとして共有・標準化されないまま進むケースが少なくありません。現場ごとに設備や機種が異なり、経験に基づく判断が求められる場面が多いことも、属人化を招く一因です。

属人化や暗黙知化が進むと、担当者が不在のときや退職したときに、同じ品質で対応できなくなります。担当者によって対応の質やスピードにばらつきが生まれ、顧客満足度にも影響する点が問題です。ノウハウが個人にとどまり、組織として共有・継承できないことが課題となっています。

2-2.人手が足りず技術継承が進みにくい

保守業務の現場では、人手不足によって技術やノウハウの継承が進みにくい課題があります。「2025年版ものづくり白書」では、製造業の就業者数が2023年の1,055万人から2024年の1,046万人へ減少したことや、中小企業の製造業で人手不足感が続いていることが示されています。また、技能継承は製造現場の競争力を維持するうえで、引き続き重要なテーマとして取り上げられています。

ベテランが持つ点検や修理の技術は、長い経験と実地の対応を通じて培われた財産です。人材が不足したまま退職が重なると、培った技術が十分に受け継がれず、対応力の低下につながりかねません。育成にかけられる時間や人手が限られ、技術やノウハウを次の世代へ十分に継承できないことが課題となっています。

2-3.蓄積したデータを管理・活用できていない

保守業務では、蓄積したデータを十分に管理・活用できていない課題があります。現場では作業報告書を手書きや紙で記入することも多く、ペーパーレス化が進みにくい状況です。データが紙やファイルで担当者ごとに分散し、一元管理できていないケースも見られます。

紙のまま分散していると、せっかくの保守データを分析や活用につなげづらいのが実情です。作業報告をサービス品質の向上に生かしたくても、どの指標を見ればよいか分からず、分析に時間がかかる場合もあります。問い合わせや修理の履歴が分散し、必要なデータをすぐに参照・活用できないことが課題となっています。

2-4.エンジニアの手配と移動の調整が難しい

保守業務を行う現場へのエンジニアの割り当てには、スキルや経験、稼働状況など複数の条件を考慮する必要があります。どのエンジニアをどの現場へ配置するかは、保有スキルや対象製品の修理実績、スケジュールの空き状況、担当エリアなどを踏まえて決める必要があり、手間がかかりがちです。

移動時間やルートも考慮すると、割り当ての判断はさらに複雑になります。急なトラブルや追加の依頼が入れば、予定を組み直し、担当者へ連絡し直す手間も生じるでしょう。人手が限られる中、エンジニアのスキルやスケジュール、移動条件を踏まえて適切に手配する負担が大きいことが課題となっています。

3.保守業務の課題をDXで解決する方法

保守業務のDXでは、属人化の解消や技術継承の促進、人手不足への対応、紙中心の業務からの脱却、エンジニア手配の効率化、蓄積したデータの活用などが主なテーマになります。デジタル技術を活用して業務の標準化や省力化を進めることで、限られた人員でも安定した保守サービスを提供しやすくなります。ここでは、具体的な方法を5つ解説します。

3-1.ナレッジを共有・継承するツールを導入する

属人化や技術継承の課題は、ナレッジを共有・継承するツールを活用することで改善できます。ベテランが持つ点検や修理のノウハウ、よくある質問への回答、作業手順をデジタルで蓄積し、組織全体で共有する方法です。マニュアルやFAQとして残しておけば、経験の浅い担当者でも必要なときに参照しながら対応でき、一定の品質を保ちやすくなります。

たとえば、よくある質問をFAQ化しておけば、新人でも高品質なサポートを提供しやすくなる点がメリットです。知識が個人ではなく組織に蓄積されるため、担当者が変わってもノウハウが引き継がれ、技術継承や対応品質の標準化につながります。属人化の解消と人材育成を同時に進められる、課題解決の第一歩となる方法です。

3-2.IoTによる遠隔監視で人手不足を補う

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)による遠隔監視の導入は、保守の人手不足を補う有効な方法です。機器にセンサーを取り付けて稼働状況を見える化すれば、現場に行かなくても状態を遠隔で把握できます。異常の兆候を早期に把握できれば、故障前の対応や計画的なメンテナンスが可能となり、突発的な停止リスクを抑えやすくなります。

遠隔から機器の状況確認や一次対応ができれば、現地への訪問回数を減らせ、サポートのスピードも上がります。熟練の技術者がオンラインで現場を支援できるため、限られた人手を効率よく生かせる点も大きな利点です。訪問が必要でも、事前に状態を把握しておけば、必要な部品を準備したうえで訪問できます。移動や訪問の負担を抑えながら対応力を保てる点で、人手不足の課題解決に役立つアフターサービスDXの施策です。

3-3.作業報告を電子化する

作業報告の電子化は、手書きや二重入力の負担を減らせる方法です。従来は現場で手書きした報告書を、帰社後にあらためてシステムへ入力し、原紙をファイリングする二重の手間がかかっていました。タブレットやスマートフォンから現場で直接入力できるようにすれば、入力の手間を大きく減らせます。

現場で作業報告データを登録し、電子サインを受領できるようにすれば、作業後の業務まで現地で完結でき、帰社の必要もなくなります。報告データをリアルタイムに確認できるため、状況共有もスムーズです。手書きの読み取りや転記によるミスも減らせるため、報告の正確さも高まります。蓄積したデータは分析や活用にも生かせるため、データ管理の課題解決にもつながります。

3-4.保守点検のスケジュールや部品の手配を自動化する

保守点検のスケジュールや部品の手配を自動化すると、担当者にかかる手配の手間を大きく減らせます。システムで定期点検の予定を管理すれば、点検時期が近づいたときに自動で知らせてくれるため、対応の抜け漏れを防ぎやすくなります。自動割り当て機能を備えたシステムであれば、スキルやスケジュールなどの条件に基づいて担当エンジニアを割り当てることも可能です。

部品の手配も、在庫や保守契約、更新時期を一元管理するシステムがあれば効率化できます。必要な部品を前もって把握し、事前に準備できるため、欠品や手配漏れによる訪問の空振りも防げる点がメリットです。担当者が手作業で調整していた業務をシステムに任せられるため、手配業務の負担が軽くなり、エンジニアの手配という課題解決にもつながります。

3-5.稼働データを活用して予知保全や新サービスの提案を行う

稼働データを活用すると、予知保全や新サービスの提案につなげられます。IoTなどで集めた機器の稼働状況や状態のデータを分析すれば、異常のサインを早期に見つけられる点が特徴です。故障する前に手を打てるため、突然の停止を防ぎ、計画的なメンテナンスに切り替えやすくなります。

蓄積したデータは、顧客への提案にも生かせる資産です。使用状況に合わせた点検時期や部品の交換、より効率的な使い方などを提案できれば、受け身の対応から一歩進んだ、能動的なアフターサービスにつながります。提案型のサービスは、機器の長期利用につながり、顧客との関係も深まります。単なる保守業務が新たな価値提供へと広がり、顧客満足度の向上と収益の両立を目指せる、DXの発展的な取り組みです。

4.保守業務の効率化に成功する企業・失敗する企業の特徴

保守業務の効率化は、ツールを導入するだけで成果が出るものではなく、課題設定や現場定着の進め方によって成果が大きく変わります。成功する企業と失敗する企業には、導入前の準備や現場との向き合い方に違いがあります。以下で、両者の特徴を解説します。

4-1.保守業務の効率化に成功する企業の特徴

保守業務の効率化に成功する企業は、導入前の準備が丁寧です。まず現場の課題を洗い出し、「どの業務のどの課題を解決するか」を明確に決めてから、ツールの導入や業務改善に取り組みます。目的をはっきりさせておくため、自社に必要なソリューションを選びやすく、導入後の効果も出やすくなる点が強みです。課題がはっきりしていれば、現場も納得して協力しやすくなります。

また、データの重要性を理解している点も特徴です。いきなり大がかりな仕組みを入れるのではなく、まず紙からデジタルへの移行を進め、情報を一元管理します。顧客情報や対応履歴を1つにまとめることで、誰でも参照でき、活用しやすいデータが積み上がっていきます。自社の業務がDXのどの段階にあるかを把握し、成果が出るまで長期的な目線で段階的に進めるのも、成功する企業に共通する進め方です。

4-2.保守業務の効率化に失敗する企業の特徴

保守業務の効率化に失敗する企業は、目的が曖昧なままツールの導入を進めてしまいがちです。「競合が使っているから」「話題のツールだから」といった理由で導入を決めると、解決したい課題が定まらず、導入後に効果が見えにくくなります。さらに、現場の協力を得ないまま進めるため、担当者にメリットが伝わらず、せっかくのツールが使われずに放置されてしまうこともあります。

現状の業務と、解決すべき課題を十分に吟味しない点も、失敗する企業に共通する弱点です。既存の業務フローには、非効率な手順や二重入力が含まれていることが多くあります。非効率な流れをそのままシステム化してしまうと、非効率さが残ったまま形だけがデジタルに変わり、ツールを導入しても課題が解決しません。目的や現場を置き去りにした導入は、コストや手間だけがかさむ結果になりやすい進め方です。

5.保守業務の効率化のために活用できるツール

保守業務の効率化には、目的に合ったツールの活用が欠かせません。以下で、データを集約する基盤や顧客管理、遠隔監視、ナレッジ共有に役立つ代表的な4つのツールを紹介します。

5-1.CRM(顧客管理ツール)

CRM(Customer Relationship Management:顧客管理ツール)は、顧客情報や対応の履歴を一元管理できるツールです。問い合わせ履歴や保証情報、メンテナンス記録などをまとめて管理すれば、誰がいつどのような対応をしたかを、すぐに把握できます。

情報を担当者間で共有できるため、対応の行き違いや、同じ説明を繰り返す手間を減らせます。対応の状況が見えるため、担当者が変わっても引き継ぎがスムーズです。過去のやり取りをふまえて対応できるため、顧客一人ひとりに合ったサービスや提案にもつなげやすくなります。顧客理解が深まることで、顧客満足度の向上や継続的な関係づくりを支えるツールです。CRMについて以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

5-2.CDP(統合データ基盤)

CDP(Customer Data Platform:統合データ基盤)は、複数の接点やシステムに分散した顧客データを統合・管理できるツールです。保守業務では、問い合わせや修理の履歴、機器の稼働データ、顧客情報などが、販売する製品の担当部署ごとに異なるシステムで保管されていることが少なくありません。

CDPでデータを統合すれば、必要な情報をすぐに参照でき、分析や活用にも生かせます。CRMなどとの連携により、顧客データを活用しやすい状態に整えられる点も特徴です。全社のデータを横断して分析できるようになるため、顧客ごとの問い合わせ履歴や修理履歴、保有製品、機器の稼働状況などをまとめて把握しやすくなります。散在したデータをまとめる土台として、保守業務のDXを支える基盤になるツールです。CDPについて以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

5-3.IoT遠隔監視ツール

IoT遠隔監視ツールは、機器にセンサーを取り付け、稼働状況を離れた場所から監視できるツールです。センサーとネットワークを通じて、機器の状態や稼働データをリアルタイムに集めて見える化する仕組みです。異常が起きたときには自動で知らせる機能もあり、現地に行かなくても状況を把握できます。

集めたデータは蓄積され、異常の予兆の発見や、稼働の傾向の分析にも役立つ点が特徴です。故障の前に対応しやすくなるため、突然の停止を防ぎ、点検や訪問の回数も見直せます。現場に足を運ぶ負担を抑えながら機器を見守れるため、人手不足の保守現場を支えるツールです。

5-4.ナレッジ・FAQ共有ツール

ナレッジ・FAQ共有ツールは、点検や修理のノウハウ、よくある質問と回答をまとめて蓄積・共有できるツールです。作業手順や過去の対応事例をデータベースにしておけば、必要なときにキーワードで検索して、すぐに参照できます。

担当者は場所を問わず情報を引き出せるため、現場でも疑問をすぐに解消しやすくなります。新人でもツールを見ながら対応でき、回答のばらつきを抑えられる点もメリットです。内容の更新も手軽で、最新のノウハウをいつでも組織全体で共有できます。問い合わせ対応の効率化と、サービス品質の均一化を支えるツールです。

6.まとめ

保守業務の効率化は、属人化や人手不足、データ活用といった課題を、DXによって解決していく取り組みです。ナレッジの共有やIoTによる遠隔監視、作業報告の電子化、稼働データの活用など、自社の課題に合った方法を選ぶことが大切です。成功させるには、導入前に「どの業務のどの課題を解決するか」を明確にし、現場を巻き込みながら進めることが欠かせません。

効率化は、単なる業務改善にとどまりません。対応の品質が高まれば顧客満足度の向上につながり、蓄積した顧客データはサービスの改善や新たな提案にも生かせます。品質向上とデータ活用を支える手段の1つが、顧客情報や対応履歴を一元管理する、顧客管理・営業支援プラットフォーム(CRM・SFA)です。顧客管理・営業支援プラットフォーム(CRM・SFA)については以下でご紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。