製薬分野におけるRWDとは?
RCTとの違いも解説!

製薬分野におけるRWDとは

製薬分野におけるRWD(リアルワールドデータ)とは、日常診療や健康管理から得られる実臨床の医療データです。新薬開発や製造販売後調査での利活用が広がる一方、RCTとの違いや使い分けの整理が欠かせません。RWDは、RCTだけでは把握しきれない実臨床の実態を可視化し、医薬品開発や安全性評価を支援するデータとして期待されています。

この記事では、RWDの利活用を検討する製薬会社・医療関連企業のご担当者に向けて、リアルワールドデータの基礎からRCTとの違い、医薬品開発・製造販売後調査・S&M領域での活用場面、利活用時の注意点までを解説しております。ぜひお役立てください。

1.製薬分野におけるRWDとは

製薬分野におけるRWD(リアルワールドデータ)とは、日常診療や健康管理の場で得られる医療データの総称です。RCT(ランダム化比較試験)のような実験的な環境ではなく、現実の医療現場で実際に記録された情報を指します。

RWDには、電子カルテデータ、レセプトデータ、DPCデータ、疾患レジストリのデータ、健康診断データ、ウェアラブルデバイスから得られる健康情報などが含まれます。国内では、厚生労働省の匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)、国内9協力医療機関の電子カルテ・レセプト・DPCデータを利用できるMID-NET、民間企業の診療データベースなどが代表例です。

RWDを統計的な手法で解析して導かれた科学的根拠は、RWE(リアルワールドエビデンス)と呼ばれます。RWDが素材であり、RWEがそこから得られた知見という関係です。医薬品の価値を実臨床の視点から示す根拠として、承認申請や再審査の資料、医療現場への情報提供にも用いられます。

2.RWDとRCTの違い

RWDとRCTは概念の階層が異なり、RWDはデータの種類、RCTは研究デザインを指します。RWDを用いる観察研究とRCTでは、データの収集環境やバイアスへの対処方法が異なります。それぞれの性質を、以下で説明します。

2-1.「RCT」は管理された条件下で有効性や安全性を検証する

RCTは、対象となる患者や投与条件をあらかじめ定め、被験者を無作為に群分けして実施する臨床試験です。管理された条件下で医薬品の有効性や安全性を厳密に検証しやすい点が特徴です。無作為化によって群間の背景をそろえやすく、GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)に沿って実施されます。

一方で、選択基準によって対象者が限定される制約もあります。併存疾患のある患者や高齢者、小児は除外されやすく、結果が現実の患者集団をそのまま代表するとは限りません。また、実施には相応の期間とコストがかかります。

2-2.「RWD」は実臨床に近い患者背景や治療実態を把握する

RWDは、日常診療や健康管理の場で自然に蓄積されるデータであるため、RCTでは対象になりにくい多様な患者背景や治療実態を分析しやすい点が特徴です。併存疾患を持つ患者、高齢者、複数の薬剤を使用している患者など、実験的な条件では集めにくい集団の情報を、症例数の多いデータから確認できます。既存データの二次利用によって、費用も抑えられる場合があります。

RWDは原則としてRCTを補完しますが、RCTの実施が困難な場合などには、条件を満たすレジストリデータを外部対照として用いることがあります。

3.製薬分野でRWDが利活用される場面

製薬分野では、研究開発の初期段階から市販後の安全性評価まで、幅広い工程でRWDが利活用されています。ここでは3つの場面を説明します。

3-1.新薬開発における研究計画の検討

RWDは、新薬開発の入口である研究計画や試験デザインの検討に役立ちます。対象疾患の患者数や患者背景、既存治療の使われ方を、実臨床のデータから把握できるためです。

レセプトデータや電子カルテデータからは、対象疾患の患者数や年齢構成、併存疾患の分布、標準治療の使用実態を確認できます。組入れ基準や評価項目の設定、症例数の見積もり、実施施設の選定など、治験デザインの具体化につながる情報です。

患者数が限られる疾患では、レジストリなどの既存データから条件の近い患者を抽出し、外部対照として用いる方法も検討されています。

3-2.製造販売後調査や安全性監視の効率化

医薬品の販売後にRWDを活用すると、実臨床での使用実態や副作用の兆候を把握しやすくなり、製造販売後調査や安全性監視の効率化につながります。

従来の製造販売後調査は、医療機関に調査票の記入を依頼して症例を集める方法が中心でした。蓄積済みの電子カルテデータやレセプトデータを解析対象にできれば、調査の期間と費用を抑えながら、大きな母集団の使用実態をつかめます。

使用実態や市場トレンドを分析することで、MA(Medical Affairs)活動やマーケティング施策立案に活用できるRWEが得られます。

安全性監視の面では、大規模データベースを活用した安全性シグナルの検出も進んでいます。特定の薬剤を使用した患者群で有害事象が増えていないかを確認することで、限られた症例では見つけにくい兆候の早期把握につながります。

3-3.希少疾患や難病に関する知見の蓄積

患者数が少ない希少疾患や難病では、RCTのみで十分な症例数を集めるのは難しく、RWDによる知見の蓄積が現実的な選択肢になります。患者が全国に分散し、対照群を含む十分な被験者数を確保しにくいためです。

患者レジストリに登録された診療情報を継続的に蓄積すれば、症状の進行や治療の経過といった自然歴のデータが得られます。レジストリの自然歴データを治験の外部対照として活用する方法も検討されています。

4.RWDを利活用する際の注意点

RWDには、診療・請求など別の目的で生成されたデータと、研究や規制利用を念頭に設計されたレジストリなどのデータがあるため、利用目的に対するデータの適合性を確認する必要があります。データの品質や正確性、交絡因子やバイアス、個人情報保護とセキュリティという3つの観点を、以下で説明します。

4-1.データの品質や正確性を確認する

RWDを扱う際は、まずデータの品質や正確性の確認が欠かせません。RWDの多くは日々の診療報酬請求や診療記録として作成されており、解析を前提に整えられていないためです。

代表的な論点がレセプト病名です。請求上の必要から付与される病名も含まれるため、確定診断と異なる場合があります。そのため、解析前に疾患定義や除外条件を確認することが重要です。

電子カルテデータでは、入力ルールや記載の粒度が施設ごとに異なる点も課題です。解析前に、欠測の状況、項目の定義、データベースの特性を確認し、目的に照らして使えるデータかを見極めます。

4-2.交絡因子やバイアスの影響を考慮する

RWDは実臨床から得られるデータであるため、特にRWDを用いた非介入・非無作為化研究では交絡因子やバイアスの影響を考慮して解析する必要があります。無作為割り付けを行わない以上、治療を受けた群と受けなかった群で背景要因がそろわないことが理由です。

重症の患者ほど特定の薬剤が選ばれやすい状況があれば、その薬剤の成績は実際より悪く見えます。年齢や併存疾患、重症度は、治療選択と転帰の両方に影響する交絡因子です。

対象集団の偏りも見落とせません。特定の医療機関群から集めたデータでは、施設特性に応じた患者が多くなり、選択バイアスにつながる場合があります。傾向スコアなどの統計手法で背景差を調整しつつ、調整しきれない要因が残る前提で解釈します。

4-3.個人情報保護やセキュリティ対策を徹底する

RWDのうち個人を識別できる診療・健康情報は要配慮個人情報に該当するため、個人情報保護とセキュリティ対策が必要です。

国内では、次世代医療基盤法により、認定事業者が医療情報を匿名加工・仮名加工し、研究開発に活用する枠組みが整備されました。利活用の際は、データの加工状態、取得経路、利用目的、提供元・提供先の関係を確認し、個人情報保護法および該当する場合は次世代医療基盤法の適用要件を整理します。

社内の運用面では、アクセス権限を業務上必要な担当者に限定し、操作ログを記録して監査する体制が求められます。解析環境の限定やデータの持ち出し制限といった運用ルールの整備も欠かせません。

5.まとめ

製薬分野におけるRWDとは、患者の健康状態や医療提供に関して多様な情報源から日常的に収集されるデータであり、RWDの適切な分析から得られる医療製品の使用状況やベネフィット・リスクに関する臨床的エビデンスがRWEです。

RWDは、観察研究や、外部対照、日常診療に組み込まれたRCTなど多様な研究デザインで利用され、新薬開発、承認・再審査、市販後安全性評価、希少疾患の自然歴把握などに活用されています。利活用の際は、データの品質、交絡因子、個人情報保護の3点を確認します。

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