物流における2025年問題の解決策は?
課題や対策を徹底解説!
日本の物流業界は、深刻な人手不足、労働環境の悪化、燃料費の高騰など、多くの課題に直面しています。特に、2024年からは働き方改革関連法の施行により、トラックドライバーの時間外労働の上限が設けられました。これにより、より一層の人材不足が懸念されます。
この記事では、EC事業を営む企業の物流担当や経営層の方へ向けて、物流における2024年・2025年・2030年問題について解説しております。ぜひお役立てください。
1.物流における2025年問題の解決策とは?
「物流業界における2025年問題」は、社会構造的な労働力人口の減少と、後ほど紹介する時間外労働の上限規制による諸問題を指すことが一般的です。
そもそも「2025年問題」とは、日本が「超高齢化社会」に突入することで生じるさまざまな課題のことです。2025年には、約800万人の団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になるため、国民の約4分の1が高齢者となります。労働力人口の減少とともに医療、介護、福祉などの社会保障費の増大を引き起こすと予想されています。
2025年問題と似た用語が「2025年の崖」です。2025年の崖は、日本の企業が直面するデジタル化の遅れによる経済的リスクを象徴する言葉として用いられています。経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」において用いられた表現で、日本の企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を適切に推進しなければ、2025年を境に国際競争力を大きく失い、経済的に大きな損失を被る可能性があると警告しています。
1-1.なぜ2025年問題は発生する?
2025年問題の根本的な要因として、少子高齢化が挙げられます。少子化対策や社会保障システムの再構築が急務となるなど、国の社会構造や体制に大きな変化をもたらす問題です。
また、2025年の崖は、多くの企業が古くからの複雑で老朽化したITシステムに依存しており、全社的なデータ活用や業務改革の障壁となっていることが原因の1つとして挙げられています。これらのシステムはカスタマイズが困難な傾向にあり、かつブラックボックス化されやすいため、必要な改革を行う上での大きな妨げとなっています。
1-2.2024年問題、2025年問題、2030年問題…何が違う?
「2024年問題」とは、主に物流業界で使用される言葉で、2018年に公布された働き方改革関連法によって導入された時間外労働の上限規制が2024年4月から物流業界にも適用されるようになったことから発生する諸課題のことです。トラックドライバーの労働時間が年間960時間に制限されることになり、特に労働時間が長いとされるトラック事業に大きな影響が出ることが予想されています。
「2030年問題」とは、日本の急速な高齢化と人口減少が引き起こす、2030年に顕在化すると予測される一連の社会問題のことです。高齢化により、2030年までに日本の総人口の約1/3が65歳以上の高齢者になると見られています。労働力不足、人材獲得競争の激化、人件費の高騰など、企業活動にも大きな影響を与え、多くの業界で労働力の確保が一層困難になると予想されています。
また、国の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」では、「営業用トラックの輸送能力が、2030年では34.1%不足する可能性がある」と示唆されており、これを「物流の2030年問題」として指すケースもあります。
2.2024年・2025年・2030年問題により物流業界に発生する課題
物流業界の2024年・2025年・2030年問題に代表される労働人口減少の問題は、物流業界にもさまざまな課題を引き起こします。以下では、主な課題を5つ紹介します。
2-1.人材が不足する
2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働に上限が設けられ、年間960時間という制限が課せられます。長時間労働が不可能となり、1日あたりに運べる荷物の量が自然と減少します。
時間当たりの運搬能力が落ちることで、同じ量の貨物を運ぶためにはより多くのドライバーが必要となります。しかし、すでにトラックドライバー不足に悩む業界において、新たな人材を確保するのは、かなり苦しい現状です。
2-2.人材が高齢化する
物流業界においては、長年にわたり若い労働者の参入が少なく、現在働いているトラックドライバーの多くが40代以上であることが多いです。トラックドライバーの職は肉体的にやや厳しく、長時間の労働が求められやすいというイメージが世間の中でも一定あるのが事実です。そのため、若い世代にとって魅力的な職業選択とはなりにくい状況が続いています。また、人口減少によって、今後も採用が難航することも考えられます。
また、労働時間の制限は、ドライバーにとっては体力的な負担を減らすメリットも当然ありますが、同時にドライバーの収入を制限することにもなります。そのため、結果として職を退くドライバーが増える可能性もあるでしょう。
2-3.宅配需要の増加に追いつけなくなる
電子商取引の拡大は続いており、特にコロナ禍の影響を受けて宅配サービスに対する需要は急増しています。
一方で、時間外労働の上限規制により、ドライバーが1日に配送できる件数がこれまでよりも限られることが見込まれます。従来のように迅速な配送サービスを維持することが難しくなり、結果的に時間指定や短時間での配送を要求する顧客のニーズに対応する能力が低下することが予想されます。
2-4.業務の負担が増加する
時間外労働の上限規制により、1人あたりの労働時間は減少が見込まれますが、それによって日々の業務を完了させるための時間が不足することが考えられます。結果的に、未完了のタスクが翌日に持ち越されるなど、作業の蓄積が発生する可能性があるでしょう。
さらに、ドライバーや倉庫スタッフが限られた時間内でより多くの作業を行う必要が出てくるため、作業の効率化が求められます。人によっては「負担が増加した」と感じるケースも出てくるでしょう。
2-5.システムの維持費が増える
労働力減少による人手不足を補うために、自動化技術やAI関連製品の導入が進むと予想されますが、これらの導入と維持には一定のコストがかかります。
一方で、古いシステムを使い続ける場合でも、メンテナンス費用が増えることも考えられます。また、2025年の崖で示されているように、長期的な目線で経済的損失を被るリスクがあります。
3.2024年・2025年・2030年問題に対応するために物流業界がすべきDXの推進
物流業界は、2024年・2025年・2030年問題などに起因する労働力不足、労働時間制限、高齢化といった複数の課題に対処していくためには、DXの推進が必要です。DXの推進は、人手不足の解消、作業効率の向上、競争力の維持につながります。
たとえば、自動運転トラックの導入、ドローンによる配送、AIを活用した需要予測や最適配送ルートの算出など、各種アウトソーシングや先進技術の利用も検討しながら、DXを進めていく必要があるでしょう。以下では、DXを推進するためのポイントを3つ解説します。
3-1.既存システムを把握する
効果的なDX戦略を立てるには、まずは既存のシステムとその限界を正確に理解する必要があります。業務プロセスを詳細に分析しつつ、既存システムの技術的評価を行いましょう。
システムの不具合や非効率な部分を明確にし、改善の優先順位を設定することが、全体的な業務効率化への第一歩です。
3-2.システムの更新を検討する
既存システムの課題を把握した後は、次はシステムの変更、リプレイスなどを必要に応じて検討します。たとえば、クラウドベースの倉庫管理システム(WMS)や運行管理システム(TMS)の導入によって、データの一元化やリアルタイムでの管理が可能となります。
新しい技術・システムの導入には、しばしば大きな初期投資が必要ですが、長期的な運用コスト削減やサービス改善も含め、長期的な費用対効果で考えることが大切です。
3-3.DXの必要性を共有する
従業員に対する研修やワークショップの開催、成功事例の共有などを通じて、組織内でDXの重要性を共有しましょう。全従業員がDX推進の利点と必要性を理解することが重要なポイントです。
特に現場の従業員が変革の必要性を理解し、技術の導入に積極的に関与することで、DXがよりスムーズに進むでしょう。
4.物流業界の2024年・2025年・2030年問題における荷主企業への影響
物流業界における労働力不足、労働時間制限といった諸課題は、運送事業者に荷物配送を委託している荷主企業にとっても大きな問題を孕んでいます。納品リードタイムの延長や輸送コストの増大など、現在のQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)が維持できなくなるかもしれません。
これを防ぐためには、荷主企業と運送事業者が一体となり、トラックから船舶等への輸送手段を切り替える「モーダルシフト」や「中継輸送」による長距離輸送の維持、他社との共同配送や小口出荷の削減などで実現する「積載率の向上」などに取り組んでいく必要があるでしょう。改めて自社の物流業務を見直し、自社および委託先運送事業者がDXに取り組んでいるか確認することをおすすめします。
5.まとめ
2024年4月から、ドライバーに対しても時間外労働の上限が設けられました。ワークライフバランスは整いやすくなったものの、1日に運べる荷物の量の減少や、ドライバーの収入の減少、収入減少による担い手不足の懸念…などが課題として挙げられます。
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