デシル分析とは?
手順・メリット・デメリット・活用方法を解説!

デシル分析とは

デシル分析とは、顧客を累計購入金額が高い順に10等分し、売上に貢献している優良顧客層を見つける手法です。デシル分析で見つかった優良顧客層のデータを分析することで、自社商品を購入する可能性の高い見込み客を見つけたり、優良顧客層に有効な施策を打ったりできます。デシル分析はシンプルな手法で、表計算ソフトを使えば簡単にできるため、初めて顧客分析を行う方にもおすすめです。

この記事では主に小売店を経営される方やECサイトを運営される方に向けて、表計算ソフトを使ったデシル分析の手順や活用方法を解説しております。ぜひお役立てください。

1.デシル分析とは

デシル分析とは、顧客を累計購入金額が高い順に10等分し、購入比率や売上構成比などをランクごとに算出する顧客分析の手法です。「デシル」はラテン語で「10分の1」を意味します。

デシル分析を用いれば、売上に貢献している優良顧客層を見つけることができます。さらに優良顧客層の特徴を理解すれば、今後見込み顧客のうちどういった層が優良顧客層に育ちやすいかを予測可能です。

また、一般的には新規顧客を獲得するよりも既存顧客をリピーターに育てるほうが低コストで対応できます。そのため、よりロイヤルティを高める施策を打つべき優良顧客層を見つける目的でもデシル分析が活用されています。

デシル分析はシンプルで分かりやすい手法なので、初めて顧客分析をする方にもおすすめです。

2.デシル分析の手順

デシル分析のやり方はシンプルなので、Excel(エクセル)などの表計算ソフトがあればほかの分析手法より比較的簡単に実施できます。特別なスキルやシステムを必要としない点が、デシル分析の魅力の1つと言えるでしょう。

今回は、Excelを使ったデシル分析の一般的な手法を3つのステップに分けて紹介します。

2-1.【STEP1】データ収集と準備

まずはデシル分析に必要なデータを集めることから始めます。デシル分析に必要となる情報は以下の通りです。

  • 顧客IDもしくは顧客を識別できる項目
  • 注文番号もしくは注文を識別できる項目
  • 購入日
  • 購入金額

上記の情報はExcelに入力してリスト化しましょう。なお、デシル分析に使用する売上データは、あらかじめ期間を設定しておくのがおすすめです。1か月・3か月・半年・1年など、一定期間を任意で決めてください。

データ収集と準備

次に、Excelの「挿入」タブから「ピボットテーブル」を選択し、購入金額の合計を顧客ごとに算出します。ピボットテーブルとは、リスト化されたデータを項目ごとに集計できるExcelの便利な機能です。「行ラベル」に顧客ID、「値ラベル」に購入金額をドラッグすることで、顧客ごとの購入金額を簡単に算出できます。

集計結果は降順に並べ替え、上から購入金額が大きい順になるようにしておきましょう。

2-2.【STEP2】デシルグループの作成

デシル分析を行うためには、集計結果を10個のグループに均等に分け、上位からデシル1~10にランク付けする必要があります。たとえば顧客100人に対してデシル分析を行う場合は、10人ずつのグループが10個できることになります。

顧客の数が10で割り切れない場合は、余った購入金額が小さい顧客を優先順位が最も低いデシル10にグループ分けしましょう。

デシルグループの作成

2-3.【STEP3】結果の分析と解釈

デシルグループを元に、ランクごとに「顧客数」「合計購入金額」「合計購入金額比率」の3点をまとめた表を作成します。合計購入金額比率は、合計購入金額を全体の合計購入金額で割ったものです。また、必要に応じて各デシルに含まれる以下の値を算出します。

  • 平均値
  • 中央値
  • 最大値
  • 最小値

データ分析の結果は適宜グラフ化することで視覚的に理解しやすくなり、マーケティングにさらに活かしやすくなるでしょう。

デシルグループの作成

上位のデシルに分類されている顧客は売上に大きく貢献しており、リピート購入につながる確率が高いと言えます。たとえば上記のグラフでは、売上全体の約8割がデシル2までの顧客で占めていることがわかります。

そのため、上位のデシルの顧客に対しては、再購入を促すための割引クーポンの配布やハイグレードな商品をおすすめするといった施策が有効です。反対に、下位のデシルの顧客に対しては、販促のための施策を行ってもコストに見合った結果が得られる可能性は低いと言えます。

3.デシル分析のメリットとデメリット

数ある顧客分析の手法の中で、あえてデシル分析を用いるメリットはいくつかあります。一方で、デシル分析にはデメリットと言える面もいくつかあるため注意が必要です。デシル分析の活用を検討している方は、以下で紹介するメリットとデメリットの両方に目を通しておくとよいでしょう。

3-1.デシル分析のメリット

デシル分析の主なメリットは以下の通りです。

比較的簡単に分析できる

デシル分析は、ほかの顧客分析手法に比べて簡単な点が大きなメリットとなっています。ほかの分析手法を用いた場合、複雑な計算が必要になりますが、デシル分析は表計算ソフトの基礎知識があれば誰でも実施可能です。分析にあたって必要になる金銭的・人的なコストが少なく済み、導入ハードルが低い点もメリットです。

マーケティング施策に展開しやすい

デシル分析は分析結果もシンプルで明快なので、結果に沿った施策につなげやすいのがメリットの1つです。デシルごとに異なる内容のメールマガジンを配信するなど、顧客層に合わせて個別のマーケティング施策を行うことも比較的容易になります。効率的に費用対効果が高いマーケティング活動につなげられる手法とも言えるでしょう。

3-1.デシル分析のデメリット

デシル分析には以下のようなデメリットや注意点があります。

分析結果の精度が完璧ではない

デシル分析はシンプルで分かりやすい反面、顧客分析における多くの要素が省略されているため、精度が完璧ではありません。特にデシル分析に使用する期間が長期にわたる場合、数年の間に1度だけ大きな買い物をした顧客が優良顧客に含まれてしまうケースがあります。

必ずしも売上アップにつながるとは限らない

基本的にデシル分析で分かるのは優良顧客層だけなので、分析結果を事業の中長期的なマーケティング戦略に活かすのは難しいと言えます。マーケティング施策の効果を高め、売上アップの可能性を上げるためには、デシル分析とほかの顧客分析の手法とを組み合わせて活用するとよいでしょう。

4.【ECサイト向け】デシル分析の有効な活用方法

ECサイトの運営においては、デシル分析を以下のように活用できます。

顧客の購買行動への理解を深める

デシル分析を行うことで、上位のデシルよりもほかのデシルに分類される顧客層のほうが、高いリピート購入率を持つと判明するケースもあります。分析結果から顧客の行動の傾向を把握し、有効なマーケティング施策につなげることがデシル分析の活用方法の1つです。

マーケティングリソースを効率的に配分する

デシル分析の結果を元にすれば、どの顧客層に集中的にアプローチすればよいかが分かるため、マーケティングリソースを効率的に配分できます。結果として、マーケティングの費用対効果を高めることが可能です。

デシル分析の結果を上記のように活用すれば、売上改善をはじめとする企業のさまざまな課題解決に役立てられるでしょう。

なお、デシル分析と同じく顧客分析の代表的な手法として挙げられるものに、RFM分析があります。RFM分析とは、顧客を以下の3つの指標から分析する方法です。

  • Recency(最終購入日)
  • Frequency(購入頻度)
  • Monetary(累計購入金額)

デシル分析が「購入金額」という1つの指標に絞られているのに対し、RFM分析では3つの指標を用いるため、分析結果の精度が上がります。ただし、RFM分析はデシル分析よりも複雑な手順を必要とする手法です。分析業務に慣れていない方はデシル分析から始め、次のステップとしてRFM分析に挑戦するとよいでしょう。RFM分析については以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

LTV最大化のカギ!RFMセグメントの分析手法と実践例

また、顧客の購買行動への理解を深める手法として、ファネル分析があります。ファネル分析とは、消費者の行動プロセスを図式化して、課題の発見・改善につなげる分析手法です。ファネル分析については以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

5.まとめ

デシル分析は特別なスキルやシステムを必要とせず、Excelなどの表計算ソフトがあれば簡単に実施できます。分析にあたって必要になる金銭的・人的なコストが小さく済み、必要なデータも少ないことにくわえて、結果に沿った施策につなげやすい点がメリットです。

一方、デシル分析はシンプルであるため精度が完璧でなく、中長期的なマーケティング戦略に活かすのが難しいデメリットがあります。ほかの分析手法と組み合わせて、戦略を決めましょう。

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