データ分析のやり方・進め方とは?
10種類の手法や注意点を解説!

ビジネスにおいてデータに基づいた意思決定は重要です。しかし、大量のデータをただ眺めるだけでは、データが何を意味しているか理解するのは難しく、情報に押しつぶされ、意思決定がかえって困難になる可能性もあります。単にデータを集計して整えるのではなく、その背後にある意味を理解するためには、適切なデータ分析を行う必要があります。
この記事では、データ分析の経験が少ない、あるいは未経験の方に向けて、データ分析の目的や活用方法、主なデータ分析手法、手順、注意点について解説しております。ぜひお役立てください。
1.データ分析とは
データ分析とは、業務や経営の意思決定をするために、データを収集・分類・加工・整理して、意味のある情報を見つける作業のことです。単に数値や結果を出すだけではなく、結果を元に仮説を立て、深い洞察を得るまでのプロセスをまとめてデータ分析と呼びます。
インターネットの発達やスマートフォンの普及を通じて、企業が活用できるデータはオンライン上で増え続けており、データ分析の重要性は高まっています。
1-1.データ分析の目的
データ分析の主な目的は、収集された膨大なデータから有益な情報を引き出し、業務改善や戦略策定、問題解決といったアクションにつなげることです。データ分析を通じて得られる情報は客観的な根拠となり、経験や勘に頼る従来の意思決定と比較して、より精度の高い判断を可能にします。
特に、マーケティングや経営判断においては、市場動向や顧客ニーズを的確に把握するためにデータ分析が欠かせません。たとえば、消費者の購買履歴やWebサイトでの行動履歴、SNS上での反応といったデータを活用すれば、顧客の嗜好や関心、購買の動機を事実に基づいて理解可能です。
データ分析の別の目的としては、課題を見つけるための仮説検証があります。自分たちが立てた仮説が正しいか、データを使って検証することで、現状を客観的に把握して、解決策を探す道標を作ることも、データ分析で可能です。
また、データ分析は問題解決のスピードを高める目的でも行われます。グラフやダッシュボードなどの分かりやすい形で分析内容を共有することにより、関係者全体で現状に関する共通認識を持つことができます。成功要因や失敗要因を可視化できるため、PDCAサイクルのスピードと精度を高められるでしょう。
データ活用や、データに基づく意思決定(データドリブン)については、以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
2.データ分析に用いるデータの種類
データとひと口に言っても、さまざまな種類があります。主にデータ分析で使われるのは、以下のような種類のデータです。
フローデータとストックデータ
「1か月間の売上額」や「年間の新規顧客数」のように、ある一定期間の変化量を示すデータをフローデータと呼びます。対して、「月末時点の在庫数」や「ある日の銀行残高」のように、特定のタイミングにおける状態を指すデータは、ストックデータと呼びます。
量的変数と質的変数
量的変数とは、年齢や売上高、商品の販売個数などの、数値で測定でき、量的な比較が可能なデータです。対して質的変数は、性別、血液型、顧客満足度のように数値で測れないカテゴリーやグループを示すデータです。量的変数は数値の差や比を用いた分析が可能ですが、質的変数は割合や分類ごとの比較に適しています。
間隔尺度と比例尺度
間隔尺度とは、気温や知能指数など、数値間の差には意味があるものの、比には意味がないデータです。たとえば、IQ150の人間はIQ100の人間よりIQが50高いですが、1.5倍賢いわけではありません。対して比例尺度は、売上高や体重、人数など、数値間の差だけでなく比にも意味があるデータです。
離散変数と連続変数
離散変数とは、商品の販売個数や店舗数、人数など、整数の値のみを取るデータです。対して連続変数は、身長、体重、温度など、ある範囲内であれば無限に細かく値を取りうるデータです。
横断データと時系列データ
横断データとは、特定の時点で複数の対象を横断して得られるデータのことで、主に異なる対象同士を比較するのに向きます。たとえば、「2025年3月の全店舗の売上」などは横断データです。対して時系列データは、「過去5年の東京支店の売上」など、単一の対象より継続して得られたデータで、トレンドなど時間的な変化を把握するのに向きます。
3.データ分析に用いられる10の手法
データ分析では、課題に応じてさまざまな分析手法が用いられます。
データを要約したいとき
データを分類したいとき
データの差異や関係性を把握したいとき
データに基づいたマーケティングを行いたいとき
以下では、各課題に向いたデータ分析の手法について、解説します。
3-1.因子分析
因子分析とは、データの背後に共通する要素(共通因子)を見つけ出し、データが何を表しているのか要約するための統計手法です。もともとは心理学分野で「知能」や「学力」など、目に見えない潜在的な能力を測定するために開発されました。ビジネスシーンにおいても「アンケート調査の回答から顧客の購買動機やニーズといった要素を特定する」といった場面で広く使われています。
たとえば、マーケティング調査で因子分析を活用するケースを考えてみましょう。あるシューズメーカーが、消費者ニーズを把握するために、「スニーカーを買うときに重視すること」をアンケート調査するとします。
回答を因子分析にかけた結果、「品質重視(ブランドの信頼性・動きやすさ)」「経済性重視(価格の安さ)」「評価重視(クチコミ評価)」の共通因子が抽出されました。これにより、「品質重視」の因子得点が高い顧客層にはプロスポーツ選手向けのスニーカーを訴求し、「経済性重視」の顧客層には低価格帯の商品ラインを強化してアプローチする、といった形で販売戦略を立てることができます。

3-2.コレスポンデンス分析
コレスポンデンス分析とは、クロス集計されたデータをグラフ上にマッピングすることで、データの関係性を視覚的に理解しやすくするデータ分析の手法です。特にマーケティングの分野で、顧客層やブランドイメージのポジショニングを把握する際によく活用されます。
たとえば、アパレル企業が「年代別の服選びで重視するポイント」をアンケート調査したとします。20代~50代の男女に対して「価格」「デザイン」「機能性」「ブランド」のどれを最も重視するか尋ね、それをクロス集計します。このままの表では、どの年代が何を重視しているかを直感的に理解するのは困難です。
そこで、コレスポンデンス分析を行い、結果を散布図にすると、関連性が高い項目同士が近い位置に配置されます。「デザイン」は20代女性に近く位置し、「機能性」は40代男性の近くに位置する、といった形で、どの年代にどのようなニーズがあるかが一目で分かるようになり、ターゲット層に合わせたマーケティングがしやすくなります。

3-3.クラスター分析
クラスター分析とは、多数のデータを類似した特性や傾向をもつグループ(クラスター)に分類するデータ分析の手法です。マーケティングにおいては、顧客をいくつかのセグメントに分けてアプローチを最適化する場面でよく用いられます。
たとえば、ある企業が顧客の行動データを使用してクラスター分析を行い、顧客を「ブランドに忠実なロイヤル顧客」「価格重視の買い物客」「新商品好きの顧客」のグループに分類したとします。これにより、各グループにカスタマイズされたマーケティング戦略を開発し、リソースを効率的に配分できます。
このように、クラスター分析を利用することで、企業は各セグメントのニーズに応じた製品やサービスの提供を通じて顧客満足度を向上させることが可能になります。
クラスター分析を使えば、ロイヤル顧客にはプレミアム感を強調したサービスを提供し、新商品好きの顧客には新発売した商品をいち早く紹介するなど、ニーズに合った顧客アプローチを実現できます。

3-4.クロス集計分析
クロス集計分析とは、アンケートや調査データなどにおいて、複数の項目を掛け合わせて集計(クロス集計)し、それぞれの関係性を見つけるデータ分析手法です。単純な集計では把握できない、データの特徴や傾向を理解する際に役立ちます。
たとえば、ある飲料メーカーが「新商品のジュースを購入した理由」をアンケート調査したとします。まず、単純集計で「味が良さそう」「パッケージが魅力的」「価格が安かった」など、理由ごとに回答の割合を出します。
これにより全体の傾向は把握できますが、より詳細な関係性を理解するためにはクロス集計が必要です。年齢層や性別、居住地域など複数の顧客属性を掛け合わせてクロス集計を行うことで、単純集計では見えなかった各属性間の相関関係が明らかになります。
たとえば、「購入理由」と「年代」をクロス集計すると、20代では「パッケージが魅力的」、50代以上では「価格が安かった」の割合が高い、といった形で、傾向を見出すことができ、データをより深く理解可能です。
このように顧客属性×消費者行動、顧客属性×ユーザーニーズなど、項目ごとのデータの関係性を理解できるため、マーケティングや商品開発において役立つ手法です。

3-5.判別分析
判別分析とは、既存データの特性をもとに分類の基準(判別関数)を作成し、新たに得られた未知のデータを特定のグループへ分類するデータ分析手法です。
たとえば、過去の購買データを用いて、将来的に商品を購入する可能性が高い顧客と低い顧客を判別するとします。このとき、購入した顧客の属性(年齢・性別・過去のウェブサイト訪問回数など)を使って判別分析を実施すると、将来の顧客が購入に至るか否かを予測するための判別基準が作成できます。
過去のデータで「特定のレスポンス広告のクリック率が商品の購入回数と相関していると分かっている」なら、現在広告をクリックしている顧客は商品の購入に至るという基準を作れます。
判別分析は判別の基準となる結果が既に判明しているデータが十分に存在し、判別したい結果が明確にカテゴライズできる場合に使える手法です。SNSの書き込みから今後のトレンド分析を行ったり、政治分野で世論調査の結果から候補者の当選を予測したりするといった際にも、判別分析は使われます。

3-6.重回帰分析
重回帰分析とは、1つの目的変数を複数の説明変数を使って予測し、説明を行うデータ分析手法です。
たとえば、小売店の売上を分析する場合、店舗の立地条件、売り場面積、商品数、広告費用など複数の要因が売上に影響を与えていると考えられます。重回帰分析では売上を目的変数とし、これらの要因を説明変数として用いて、それぞれの影響を定量的に示すことができます。
重回帰分析は、受注数や売上の予測、顧客満足度の向上やブランドイメージ形成など、ビジネスにおけるさまざまな場面で使われます。

3-7.相関分析
相関分析とは、2つの変数間の関係性(相関)を定量的に把握し、どの程度同じ方向で変化しているか、あるいは逆方向に変化しているかを分析する手法です。たとえば、気温が上昇するとアイスクリームの売上が伸びる場合は「正の相関」、気温が上昇するとストーブの売上が下がる場合は「負の相関」と関係が理解できます。まったく関係が見られない場合は「無相関」と呼びます。
相関分析は自社の販売施策を決める際などによく使われる手法です。たとえば、売上と広告費の関係を相関分析すれば、次回の商品販売にどの程度の広告費を投入すればよいのか予測できます。
ただし、相関関係が必ずしも因果関係を示すわけではないという点には注意が必要です。たとえば、広告費と売上に強い相関が見られたとしても、広告費の増加が直接的に売上を伸ばしたのか、それとも別の要因が関係しているのかは相関分析だけでは判断できません。

3-8.RFM分析
RFM分析とは、顧客の購買履歴をもとに以下の3指標を3~5段階程度にスコア化して組み合わせ、顧客を複数のグループに分類するデータ分析手法です。
- Recency(最終購入日)
- Frequency(購入頻度・購入回数)
- Monetary(累計購入金額)
それぞれの指標を3~5段階にし、複数の顧客のスコアを見比べることで、優良顧客や休眠顧客などの形で顧客を分類・分析できます。
スコアリングした結果、顧客がどのグループに属するかが一目で分かるため、マーケティング施策を立案しやすくなる点がRFM分析のメリットです。限られたリソースをどこに集中するべきか明確にでき、高い売上が期待できる顧客層や離反リスクの高い層を早期に発見できます。
RFM分析については、以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
3-9.コンジョイント分析
コンジョイント分析とは、複数の要素(価格や機能、デザインなど)が消費者の選好(個々人の特定の選択肢への好みや傾向・優先順位)にどの程度影響するかを定量的に明らかにするデータ分析手法です。複数の要素を組み合わせた選択肢を提示し、消費者に好みを解答してもらうことで、各要素の重要度を分析します。
単純なアンケートで「価格は安いほうがよいか」「性能は高いほうがよいか」と尋ねると、多くの人がすべての要素について良いものを求める回答をしがちです。そのため、コンジョイント分析では、たとえば「価格が10万円でメモリが16GB、プロセッサがコアi7のPC」と、「価格が20万円でメモリが32GB、プロセッサがコアi9のPC」といった形で選択肢を作ります。その上で、「どれを最も購入したいか」「どれなら買ってもよいか」「選好順位はどうか」といった評価を行ってもらい、顧客が重視する要素を分析します。
コンジョイント分析を行えば、価格を上げる代わりに機能を充実させる、あるいは機能を抑えて低価格を実現する、といった形で製品開発やサービス内容の路線を決めることが可能です。市場調査の際に、単純なアンケート以上に正確な顧客インサイトを得たい場合に特に有用な手法です。
3-10.バスケット分析
バスケット分析とは、顧客の買い物かご(バスケット)に一緒に入る商品の組み合わせを分析することで、商品同士の関連性を把握するデータ分析手法です。小売店やECサイトなどで、POSデータを活用して「どの商品がどの商品と一緒に買われやすいか」を見つける目的で使われます。
バスケット分析では、以下の4つの指標を用いて商品の関係性を測ります。
支持度
全購買データの中で、商品Aと商品Bが一緒に買われた割合を指す指標です。併買の頻度が高いほど値が大きくなります。
信頼度
商品Aが買われた場合に、商品Bがどの程度買われるかを示す指標です。
期待信頼度
全購買データの中で、商品Bが購入される割合を示す指標です。
リフト値
商品Aが購入されることで商品Bが購入される可能性が、全体平均と比べてどのくらい高まるかを示す指標です。信頼度を期待信頼度で割って算出します。結果が1を超えると、Aの購入によってBが買われる確率が高まると判断できます。
バスケット分析は、よく買われる商品同士を近くに配置する、「この商品を買うお客様はこういった商品も買っています」などの形でクロスセルを促す際に活用できます。また、商品の割引を行う際に、リフト値が1以上の商品を双方割り引けば、合わせ買いしてもらえる可能性を高められます。

4.データ分析の手順
データ分析を行うにあたっては、正しい手順を踏むのが大切です。以下では、一般的なデータ分析の手順を解説します。
1.データ分析の目的を定める
まずはデータ分析の目的をはっきりさせましょう。売上向上や顧客満足度改善など、目的を定めることで、必要となるデータや分析の方向性を見失わずにすみます。たとえば「リピート率の減少を知る」という分析目的を定めれば、リピート率に関連する仮説立てやデータ集めができます。
2.現状の課題や原因についての仮説を立てる
「リピート率が低下しているのは価格設定が原因ではないか」など、仮説をいくつか挙げ、それぞれの検証優先度を決めましょう。仮説を絞り込むことで、データ分析の方向性がより明確になります。
3.最適な分析手法を選ぶ
仮説をもとに、最適な分析手法を選びます。検証したい内容や扱うデータの性質によってどの手法を選べばよいのかは変わってくるため注意しましょう。たとえば、「リピート率が低下しているのは価格設定が原因ではないか」という仮説を証明したいのであれば、適切な分析手法は重回帰分析です。
また、すでに社内に蓄積されているデータだけで検証できるのか、新たに調査が必要かなど、分析対象となるデータについても見極めが必要です。
4.データを収集・整形する
分析に使用するデータが決まったら、必要に応じて調査をするなどの形でデータ収集を行い、フォーマット統一や欠損値の処理といった整形をします。整形を疎かにすると、分析結果に誤差が生じる恐れがあります。古いデータを最新の内容に更新する作業も忘れずに実施しましょう。
5.分析を実行する
整形したデータを用いて実際に分析を実施します。仮説検証を行い、得られた結果をビジネスの課題解決や戦略立案に反映しましょう。また、分析結果が出たら終わりではなく、施策を実行して効果を測定し、必要に応じて仮説や手法を見直すPDCAサイクルを回すことが重要です。
以上のステップを意識しながらデータ分析を進めれば、短時間でも的確な打ち手を発見できる可能性が高まり、ビジネス目標の達成に近づくでしょう。
5.データ分析をするときに注意すべきポイント
データ分析を行うにあたっては、以下の点にも注意しましょう。
一次データに基づいて分析をする
一次データとは、自社で直接収集したデータや、実地調査・アンケートなどから得られた「加工前」の情報を指します。対して、他社や第三者がすでに加工したデータは二次データと呼びます。一次データは自社の実情をより正確に反映しているため、施策を決める際の根拠として説得力が高く、加えて二次データのように第三者の意図が混入しづらい点がメリットです。もし二次データを利用する場合は、情報源や加工の経緯を把握し、活用の範囲や精度を慎重に評価しましょう。
データのバイアスに注意する
データ分析では、データそのものや分析者の思考にバイアス(偏り)が混入するリスクがつきものです。たとえば、顧客の購買データを一部の地域や特定の属性のみで集めてしまうと、全体の傾向を正しく反映できない可能性があります。また、分析者自身が「こういう結果が出てほしい」という先入観を持っていると、都合のいい結果を強調したり、不都合な事例を見落としたりするリスクも存在します。偏りを避けるためには、偏りを排除できるだけの十分なデータ量と多様なサンプルを採取し、複数人で分析を行って多角的な検証をするのが大切です。
分析ツールを活用して効率化する
データ分析は、収集・加工・集計・可視化など多くの工程を含むため、手作業だけでは時間と労力がかかり、ミスが生じるリスクも高まります。BIツールや統計解析ソフトなどの分析ツールを活用すると、大量のデータを短時間で整理・加工でき、グラフやチャートなどの形ですぐに見やすい分析結果を出力可能です。
altcircleでは、各企業が収集したデータに基づいた意思決定プロセスを構築し、戦略立案から仮説設定、施策実行、分析、改善までのサイクルを一貫してサポートするデータ分析・活用コンサルティングを提供しております。お客様自身でデータ活用と施策展開が行える「自走化」を支援するサービスです。データ分析・活用コンサルティングについては以下でご紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
6.まとめ
データ分析は、企業が自らの現状を客観的に把握し、将来の変化や自社の可能性について予測するための手段です。目的や課題を明確にして適切な手法やデータを選び、仮説検証を繰り返すと、プロセスが効率よく機能します。さらに、バイアスを排除しながら分析結果を組織全体で共有すれば、意思決定のスピードと精度を高めることが可能です。
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