越境ECとは?
運用のメリット・デメリットや準備時の注意点を解説!

エシカルとは

コロナ禍を経て、全世界的にECサイトの市場が伸長しました。また、インターネットを利用した取引により、国内にいながら海外の顧客に向けた商品を簡単に販売できるようになりました。国外に向けて商品を販売する越境ECを構築すれば、市場拡大の波に乗り、商圏を大きく広げられるでしょう。そのため、日本国内でも越境ECに取り組む企業が増えています。

この記事では、越境ECの構築にこれから取り組もうと考えている方に向けて、越境ECを運用するメリット・デメリットや注意点を解説します。越境ECの需要増加に合わせて、自社の商圏を拡大したい方はぜひお役立てください。

1.越境ECとは?

越境ECとは、インターネットを利用し、国境を越えて商取引を行うことです。商圏が大きく広がり、売上の増加が見込めるという理由で、日本でも越境ECに取り組む企業が増えています。 一般的に越境ECという言葉を使う場合、国内だけでなく国外の顧客にも開放したECサイトを構築し、外国の顧客とも取引を行うことを意味します。これは通常、外国語での画面表示や外国通貨での決済などの機能をECサイトに用意して、どの国の消費者からでも購入が可能な状態を指します

1-1.越境ECとグローバルECの違い

越境ECと似た言葉に、「グローバルEC」があります。グローバルECとは、海外諸国の顧客をターゲットとして商取引を展開するECのことです。越境ECとグローバルECの間に厳密な区別はなく、一般的に同じような意味合いで使われます。ただし、明確な意図を持って両者を使い分けているケースもあるため、認識に齟齬が生まれないよう注意しましょう。越境ECの「越境」は「国境を超えること」であり、日本から海外へ商品を発送するニュアンスが含まれます。一方、グローバルECの「グローバル」は「地球規模の」「世界的規模の」と言った意味の言葉であり、物理的に国境を越えていく意味合いは含みません。 ビジネスで越境ECやグローバルECについて話す場合があれば、どのようなケースを想定しているのかを明確にし、共通の認識を得るようにしたほうがよいでしょう。これらの用語は似ていますが、それぞれ独自のニュアンスを持っています。しかし、 本記事では、これらの微妙な違いを区別することなく、両者を「海外向けのEC」という広義の意味で「越境EC」と表現しています。これは、国境を越えて商品やサービスを提供するという、両者の共通の要素に焦点を当てているためです。

2.越境ECを運用するメリット

越境ECの市場規模が成長を続けているのは、それだけ企業に大きなメリットがあることが理由です。代表的なメリットを2点ご紹介します。

2-1.商圏を世界中に拡大できる

越境ECに取り組む大きなメリットの1つが、商圏を拡大できる点です。少子化の影響もあり、日本国内はマーケットの縮小が懸念されています。企業が生き残るためには、国内市場だけでなく、海外市場にも目を向けることが欠かせません。 越境ECであれば、国内に居ながら海外進出が可能です。日本製品の品質は優れている、というイメージは今でも強く、海外で人気が高い傾向にあります。消費が活発な国を対象にECサイトを構築すれば、商圏を大幅に拡大できるでしょう。経済産業省の調査によると、日本・アメリカ・中国の各国で越境ECの需要は伸び続けており、アメリカ・中国の市場は日本以上の伸長を見せています。

国名 越境EC購入額
(2019年)
越境EC購入額
(2020年)
越境EC購入額
(2021年)
伸び率(2021年)
日本 3,175億円 3,416億円 3,727億円 9.10%
アメリカ 1兆5,570億円 1兆7,108億円 2兆409億円 19.30%
中国 3兆6,652億円 4兆2,617億円 4兆7,165億円 10.70%

たとえば、中国の場合、2021年の日本事業者からの越境EC購入額は2兆1,382億円であり、前年に比べて9.7%金額が増加しています。急速に拡大する需要の高い市場に参入すれば、大きな利益を見込めます。

2-2.実店舗出店よりも初期費用が抑えられる

越境ECを利用するメリットとして、海外に実店舗を構えるケースに比べて初期費用が抑えられる点も挙げられます。海外に販売代理店として実店舗を構える場合、煩雑な事前準備に加え、海外市場調査や物件の賃料、設備費用などさまざまな費用が必要です。数百万円規模のコストがかかることも珍しくありません。 越境ECであれば、オンライン上で販売や取引ができ、店舗の賃料や設備費などの初期費用、現地で働く従業員の人件費や光熱費と言った維持費も不要です。

3.越境ECを運用するデメリット

越境ECには大きなメリットがある反面、参入のハードルとなりうるデメリットもいくつか存在します。越境ECサイト構築を検討しているのであれば、メリットだけでなく、デメリットについても理解しておきましょう。

3-1.言葉の壁や文化の違いを解決する必要がある

越境ECでは、購入者が外国語で問い合わせてくる為、複数言語でのカスタマーサポート体制が必要になり、その為の体制構築、運営費用が課題となります。代表的な課題は以下の4点です。

現地言語での翻訳と問い合わせ対応

越境ECサイトでは、商品ページやプライバシーポリシー、サポートページなどを含めたサイト全体をターゲット国で利用される複数言語に翻訳し、問い合わせにも対応する必要があります。

現地文化に精通した自然な翻訳

機械翻訳を使うと、不自然な言い回しや意味の通らない文章になる恐れがあり、サイト訪問者の不信を招きかねません。販売国の言語に精通した翻訳者にサイト翻訳を依頼する、現地のスタッフをカスタマーサポート要員として雇用する等の対応方法が考えられます。

現地商習慣、法律、輸送などの知識

トラブルを避けるためには、日本とは異なる販売国の文化や商習慣を理解して適切に対応することも必要です。ビジネスに関する法律や国際輸送に関する知識も押さえておく必要があります。あいまいなまま取引をすすめようとすると、重大なトラブルを招きかねません。

現地決裁法王への対応

決済方法についても、国によってはクレジットカードの利用が一般的でない場合があります。相手国で利用が盛んな決済サービスを調べ、用意しておくなどの準備も必要でしょう。

3-2.配送費用が高額になる

越境ECでは、海外在住の顧客に商品を発送する必要があります。配送距離が長い上に関税手続きなどが発生するため、必然的にユーザーのもとに届くまでの時間が長くなり、配送費用も高額になります。配送費用が割高になっても購入してもらえるよう、商材の価値や魅力をユーザーにうまく伝える工夫が必要です。

4.越境ECを準備するときの注意点

ゼロから越境ECを立ち上げるのであれば、入念な準備が欠かせません。準備にあたっては、いくつか注意すべき点があります。ここでは、特に注意すべきポイントを3つ紹介します。

4-1.販売国の法律や物流の知識を身に着ける

越境ECの立ち上げにあたっては、まずは販売国の法律や規制、物流の決まりなどを確認するのが大切です。商標権の扱いや食品の安全基準は国によって異なるため、万が一にも違反しないように入念にチェックすることが求められます。 また、国や地域によっては、ビジネスライセンスを得なければ販売できない商品や、輸出入が禁じられている商品があります。事前に販売しても問題ないか、法的な観点からのチェックが必要です。物流の状況も、国や地域により大きな差があります。配送方法なども事前に十分調べておくようにしましょう。

4-2.KPIを設定する

越境ECに限らず、ECサイトを利用してビジネスを行うときには、KPIの設定が重要です。

越境ECでの目標を、仮に「月額1,000万円の売上」と設定したとしましょう。売上は「アクセス数×購入率(CVR)×平均客単価」で算出可能です。たとえば、以下のいずれの設定でも、売上は1,000万円です。

どのパターンでも売上高は1,000万円

  • アクセス数10万×購入率1.0%×平均客単価1万円
  • アクセス数5万×購入率2.0%×平均客単価1万円
  • アクセス数50万×購入率1.0%×平均客単価2千円

達成したい目標に応じて、重要なKPIを設定しましょう。たとえば、売上向上を目指すのであれば、前述の通りアクセス数、購入率、平均客単価などが考慮すべき重要なKPIになるかもしれません。一方、ブランディングを重要視するのであれば、直帰率や滞在時間を重視することもあります。 何をKPIにするのか選択したら、現地や自社の状況を踏まえて具体的な数値目標を設定し、それを達成するための施策を考え、実行に移しましょう。

4-3.文化の違いを理解してマーケティング戦略を立てる

越境ECサイトを開設した後は、効果的な販売戦略を立てて実践していく必要があります。単にECサイトを開設しただけでは集客できず、売上も伸びません。 ただし、国内と同じ方法でプロモーションを行ったとしても、同じような効果は見込めないでしょう。国ごとの文化や習慣を十分に理解した上で、海外ユーザーに強く訴求するプロモーションを実施することが重要です。たとえば、中国の越境ECでSNSを活用して宣伝する場合、TwitterやLINEを使ってもあまり効果は見込めません。中国国内ではTwitterやLINEは国策によってアクセスが遮断されており、代わりにWeiboやWeChatの使用が盛んであるためです。 越境ECを運営する予定であれば、信頼できる現地のネット広告代理店と契約するのも検討するとよいでしょう。

5.まとめ

越境ECとは、国境を越え、海外諸国の顧客をターゲットとして商取引を行うECサイトのことです。越境ECサイトの需要は日本・アメリカ・中国の各国で伸び続けており、特にアメリカ・中国の需要は日本以上の伸長を見せています。越境ECの構築により、リアル店舗を出店するのに比べて初期費用を抑えつつ商圏を大きく広げられます。越境ECの構築にあたっては、販売国の法律や物流について知識を身に着け、適切なKPIを設定した上で諸外国の文化に合わせたマーケティング戦略を立てましょう。

altcircle(オルトサークル)のECプラットフォーム/フルフィルメントでは、越境ECサービス「Lingble」を活用し、越境ECの成功に不可欠な、事前調査、戦略・計画の立案からEC基盤の構築、マーケティングおよびフルフィルメントを含めたEC事業運営・業務運用までを一気通貫で支援し、国内ブランドの海外進出および海外ブランドの日本進出への伴走を強化しています。 越境ECへの取り組みを検討されている方や越境ECに関するお悩みがあれば、ぜひ一度altcircle(オルトサークル)にご相談ください。

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