音声認識とは?
基本的な仕組みや導入におけるメリット・注意点、活用事例を解説!

音声認識

音声認識は25年程前からビジネスシーンでの活用が始まりました。認識の精度も年々高まり、現在ではさまざまなビジネスのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、生産性向上や業務効率化を実現するための技術として注目されています。

この記事では、DX推進のために音声認識の活用をご検討されている方へ向けて、音声認識の仕組みやメリット、導入シーン別の活用事例を紹介します。ぜひお役立てください。

1.音声認識とは

そもそも「音声認識とは何か」という基本的なポイントについて解説します。

1-1.音声を文字に変換する技術

音声認識とは、音声を認識して文字に変換するための技術です。人間の言葉を機械が認識し、それを文章として出力するのが音声認識の基本機能です。ビジネスの現場では、音声認識を用いて音声データを文字起こしする作業の自動化や、認識した文字をAIやシステムに解釈させて業務を自動的に行うことで複数の業務を並行して行うなどの用途で用いられています。

1-2.音声認識の歴史について

音声認識の歴史は古く、1971年のアメリカですでに実践的な研究がはじまっていました。2000年代になるとアルゴリズムが改善され、音声認識の精度が実用化レベルにまで達するようになりました。実際にパソコンソフトやカーナビなどに搭載され、機械と言葉でやり取りをする時代が到来したのです。その後も音声認識は発展を続け、すでに私たちの生活に根付いている技術になっています。

近年では、家電や音声アシスタントなどでも音声認識の導入が進んでおり、たとえば、店舗の予約などのシーンでも音声認識を活用して対応するなどの事例が出てきました。

1-3.AI(人工知能)の発展によって音声認識も進化した

音声認識は、AI(人工知能)と組み合わせることでその精度がさらに向上しました。「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる学習システムによって、日常で音声認識を活用できるレベルまで技術が発展したのです。たとえば、Appleのスマートフォンには、「Siri」と呼ばれるAIによる音声認識システムが搭載されています。声をかけるだけでインターネット検索をしたり、音楽を楽しんだりできるため、音声認識は一般的な生活にまで浸透するようになってきました。

2.音声認識の仕組みについて解説

音声認識の仕組みを理解することで、そのメリットに気づき、利用シーンの発想も広がります。音声認識の基本的な仕組みである3つの工程をご紹介します。

2-1.「音響分析」で人間の声をデジタル情報に変換する

音声認識では、まず入力された人間の声をデジタル情報に変換します。「音響分析」と呼ばれるこの工程によって、音声というアナログデータをデジタル信号に変換し、機械が認識しやすい形に整えることができます。人間の声をデジタル化することが、音声認識の最初のステップです。

2-2.「音響モデル」で音素を探し出す

「音響モデル」とは、入力された音声から抽出した特徴に近い「音素」を探し出して文章化(正確に言うと文字の羅列化)を行う機能です。機械に学習された統計データから、その音声が具体的にどの音に当たるのかを選択します。音響モデルの工程によって、入力された音声が文字の羅列として表現されます。

2-3.「言語モデル」によって文章を構築する

「言語モデル」とは、大量の単語や品詞、文章自体を学習した、文章中の単語ごとのつながりの「もっともらしさ」を判断するための「学習済データ」です。蓄積された学習データを活用し、単語や品詞の前後の出現頻度(つながりやすさ)を確認して、適切と思われる文章を構築する方法です。文字の羅列から単語を引き当て、妥当と思われる単語の組み合わせを文章として出力します。

以上3つの工程が、音声認識の基本的な仕組みとなっています。「言語モデル」は単に単語前後関係のつながりの強弱を判断するモデルであり、事前に単語の引き当て候補を見つけておく方法も一般的です。

「言語モデル」による文章構築の例

「たこをあげる」

「凧を上げる」のか「蛸を揚げる」のか、わからない。「こうえんでたこをあげる」の場合は、

1.「公園でたこ(凧 or 蛸)をあげる(上げる or 揚げる)」

2.「「公園」と「凧」」or「「公園」と「蛸」」どちらの結びつきが強いか → 「凧」

3.「凧」と「上げる」or「揚げる」どちらの結びつきが強いか → 「上げる」

4.「こうえんでたこをあげる」 → 「公園で凧を上げる」

余談ですが、蛸をテーマにした公園とかがあると、誤認識してしまいますね。(笑)

3.音声認識を導入するメリット

音声認識による、ビジネス上のメリットをいくつか紹介します。

3-1.テキスト化にかかる作業を省略できる

電話や会議といったビジネスシーンで、音声データの文字起こし(テキスト化)作業をするケースは意外と多いのではないでしょうか。音声認識を導入することで、このテキスト化作業を省略できます。たとえば、電話音声や会議内容を録音したデータを音声認識でテキストデータとして保存するといった使い方です。

また、昨今の技術革新により、音声をリアルタイムで認識することもできるようになってきたため、会議やミーティングの終了と同時に内容を資料にまとめて、関係者に配布するなどにも利用できます。

3-2.ヒューマンエラーを防げる

音声の書き起こし(テキスト化)は人間の手に任せる限り、ミスを完全に防ぐことは不可能です。一方、音声認識は入力ミスや聞き間違いによるミスを防ぎやすく、組み合わせて使うことで修正の手間を削減できます。ただし、雑音がない、活舌が良い、適切な音量といった、認識しやすい音声が必要になります。

また、音声認識を導入することで音声を文章化する工程が簡略化されれば、従業員の業務負担を軽減できます。ヒューマンエラーは従業員にとって精神的な重荷になるため、エラーが減ることによるES(Employee Satisfaction:従業員満足度)の向上にも貢献できます。

ただ、音声認識を活用しても100%完全に認識することは難しく、ある程度の誤認識は避けられないため、音声認識した文章を人間の手で修正する方法を用いることが多いです。

3-3.ハンズフリーで業務が進められる

音声認識は、ハンズフリーで業務を進めるためにも使えます。別の作業をしながらメモしたい内容を音声でテキスト化する、機械操作を音声で行うなど、業務を同時進行できることもメリットの一つです。

ネット検索などの用途にも活用できるため、作業の途中で調べものをしたい場合など、ハンズフリーで検索できる音声認識が便利に使えます。

4.音声認識を活用する際の注意点

音声認識をビジネスで活用する際の注意点をいくつか紹介します。

4-1.ノイズを極力減らす必要がある

周囲の雑音が大きい場所では、認識ミスの発生に注意が必要です。会議で複数の人が同時に発言している、雑談が許されている職場内の会話、騒がしい場所からの電話(お相手の声)などで記録された音声データの場合、音声認識が正しく活用できない可能性があります。

状況によっては音声を入力しやすいようにマイクを使ったり、ノイズの少ない環境を整備したりといった対策が必要です。まずは実際に音声認識を職場で実施し、きちんと認識されるか試してみましょう。電話の場合は、相手(特にお客様)が電話をかける環境を静かな場所に変更してもらうことが難しいなど、コントロールできないケースも生じます。そういった場合は、話の内容を電話の受け手(オペレーター)側が復唱するなど、業務運用上の取り決めを検討しておきましょう。

4-2.企業独自の名称、方言やスラングなどは認識できないケースがある

企業独自の商品名・サービス名・略称、また、方言やスラング、若者言葉といった使用例が少ないものは、単語辞書に登録されていないことが多く、そのため正確にそれらの音葉を認識できない可能性があります。

音声認識を使用する際には、利用用途によって、一般的な言葉遣いで済ませられる際はなるべく多用されている言葉を選び、認識しやすい言葉を使いましょう。そうでない場合は、認識したい言葉を追加学習できる音声認識システムを選ぶ必要があります。

5.音声認識の活用事例

音声認識は、すでに多くのビジネスシーンで活用されています。具体的な事例から、活用例を紹介します。

5-1.医療現場での活用事例

医療現場では、患者の症状などをカルテへ記録する業務での利用や、調剤薬局で処方内容の説明を記録するシーンで利用するケースが多くなっています。また、音声認識を導入することで入力にかかる手間とミスを減らし、業務効率化を実現している事例も増えています。

医療で使われる単語は、一般的な言葉遣いでないケースが多いので、事前に医療用語を登録しておくことでスムーズに認識してくれます。頻出単語をピックアップして、医療現場に合わせた音声認識システムを導入しましょう。このようなケースでは、必然的に追加学習できる音声認識システムが必要となります。

5-2.製造業での活用事例

製造業では、計測結果・作業状況・転記作業などに音声認識を活用することで、業務効率化が進んでいます。音声認識によって、計測中・作業中にデータ入力を理由に作業を中断する必要もなくなり、結果的に作業時間の大幅な短縮につながります。

5-3.コンタクトセンターでの活用事例

コンタクトセンターでのオペレーション業務にも音声認識が活用されています。受付の会話内容をリアルタイムでテキスト化できるため、ユーザーの声をその場で可視化できます。これによりオペレーターが会話中にメモを取る必要がなくなり、会話に集中できるようになる点や、どのオペレーターがどんな会話をしているのか、対応状況や会話内容を管理者(スーパーバイザー)がリアルタイムでモニタリングできる点などがメリットです。

コンタクトセンターに集まったユーザーの声を分析する「VOC活動」に活用できるデータをスムーズに収集できる副次的な効果もあります。重要な顧客接点であるコンタクトセンターの意義を最大限に活用するには、音声認識の導入が必須になってくるでしょう。VOC分析については以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

6.まとめ

音声認識は専門性の高い機能ではなく、すでに一般の人々でも簡単に使えるシステムとして浸透しています。その需要はビジネスの現場にも広まっていて、多くの企業・業界が音声認識を活用して業務効率化や生産性向上を実現しています。この機会に音声認識の基本とメリットを確認し、自社への導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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