ビジネストランスレーターとは?
育成するメリットや必要スキルを解説!

ビジネストランスレーター

IT技術の発達により、企業はWebを通じてさまざまなデータを収集し、利活用できるようになりました。データにもとづいて経営戦略を決定するデータドリブンが必要になる中、データの分析を行うデータサイエンティストの価値も向上しています。

一方で、データサイエンスやIT部門のメンバーの専門用語が、営業部門や経営部門に伝わらず、結果としてデータの利活用がうまく行かないケースもあります。

このような問題を解決するのが、技術部門の専門的な言葉と、営業・経営部門の抽象的な要望を、お互いに分かりやすいよう翻訳する「ビジネストランスレーター」です。

この記事では、データの利活用がうまく行かず悩んでいる方に向けて、ビジネストランスレーターの概要や育成するメリット、必要なスキルを解説します。ぜひお役立てください。

1.ビジネストランスレーターとは?

ビジネストランスレーターとは、データサイエンティストやデータエンジニアが所属する部署と、営業・経営を担当する部署の間をつなぐ役割のことです。技術部門の専門的な言葉と、営業・経営部門の抽象的な要望を、お互いに分かりやすいよう翻訳することから、トランスレーター(翻訳者)と呼ばれます。

データサイエンティストはデータ分析やインフラ整備といった分野には長けているものの、経営のプロではありません。そのため、技術をどのように経営や販売活動に応用すればいいのかを考えるには不向きな傾向があります。

一方、経営部門は経営のプロですが、データサイエンスやITに関する知識レベルは人それぞれです。データサイエンティストが作成したデータが持つ意味を読み取ったり、IT技術を経営に活用したりする知識が不足しているケースがあります。

同様に、営業部門が現場でデータを販売に生かしたり、生産性向上にITを活用したりするのは、営業部門だけでは難しい場合も多くあります。

そこで必要となるのが、データサイエンスと販売現場・経営の課題の双方を理解しているビジネストランスレーターです。ビジネストランスレーターが両者の間に入ることで、分析結果を元に具体的な課題解決へとつなげやすくなります。

1-1.ビジネストランスレーターが求められる理由

技術系部署と経営・営業を担当する部署は、どの組織においても相容れない部署となりやすい傾向があります。仕事を進めるのに情報交換が必要にもかかわらず、お互いの情報を深く理解できないために、誤解や不満が生まれやすいのが問題です。

技術系部署と営業・経営系部署との間に生じる誤解や不満の原因は、考えや目的を共有する共通言語がないことです。そこで、技術系部署と営業・経営部門との間に入り、翻訳者の役割を果たすビジネストランスレーターが求められます。

ビジネストランスレーターがお互いの意図を翻訳できれば、技術部門の要望と、営業・経営部門の要望がお互いに伝わります。データサイエンティストは販売現場や経営層が求めている形でデータを分析し、営業・経営部門は適切にデータを利活用できるでしょう。

1-2.ビジネストランスレーターの役割

IT技術が進歩し、企業がインターネットを通じて多くの情報を収集可能になった結果、近年実施する企業が多くなった経営手法の1つが、データドリブン経営です。データドリブン経営とは、客観的なデータ分析結果を判断基準に置いた経営戦略を指します。Web上の書き込みやアンケート調査、行動履歴などのビッグデータを活用すれば、より正確な経営・販売施策を打つことが可能です。

しかし、ビッグデータの解析には高度なデータ分析力や、プログラミングスキルが必要となります。そこで必要となるのがビジネストランスレーターです。データの扱い方を的確に判断し、データサイエンティストと営業・経営チームとの調整を図ることで、信頼できるデータ作成に導くのがビジネストランスレーターの役割となります。データドリブンについては以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

2.ビジネストランスレーターを育成するメリット

ビジネストランスレーターは技術に特化した人材でも、営業や経営に特化した人材でもなく、それぞれを仲介する仕事を行います。よって、直接データ分析やアプリケーション開発に携わるわけではなく、営業・経営戦略を立てるわけでもありません。しかし、ビジネストランスレーターを育成することは、企業にとってさまざまなメリットがあります。主なメリットを2つ紹介します。

2-1.DXプロジェクトを推進できる

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、企業がAIやビッグデータ、Webアプリケーションなどのデジタル技術を用いて業務改善などを実現させることです。DXを実施すれば、新たなビジネスモデルの創出や企業風土の変革などにもつなげられます。しかし、企業がDXプロジェクトを進める際、以下のような問題が発生するケースは少なくありません。

  • 目的を明確にしないまま新技術の試験的導入などを実行した結果、コストを浪費するばかりで効果が薄い施策が生まれる
  • 営業現場の実態と異なるアプリケーションが納品され、使われないままになる
  • DXプロジェクトを立ち上げた後、経営チームがタッチしなくなり、プロジェクトが頓挫する
  • DXプロジェクト推進のためのデータが不足・欠落している状態でプロジェクトがスタートし、迷走する

ビジネストランスレーターは販売の現場と上層部の双方が求めている機能やデータを、技術部門に伝えることで迷走を防ぎます。また、同様に、データサイエンティストが求める行動を営業部門や経営部門に伝え、新技術やデータを効果的に扱えるようにしますビジネストランスレーターを育成すれば、データの意味や企業の現状を正しく認識し、DXプロジェクトが適切なゴールに向かえるよう手助けできる人材が生まれるでしょう。

2-2.エンジニアでない人材を活用できる

営業部門で活躍していた方や文系学部を卒業した方など、エンジニアとしての経験がない人材もビジネストランスレーターとして多く活躍しています。また、統計ツールや可視化ツールには、統計学の専門知識がない人でも使いこなせるものが多いのも注目すべきポイントです。

ビジネストランスレーターにとって大切なのは、プログラミングスキルよりも、データを用いて課題を解決できるスキルと言えます。そのため、IT人材以外もビジネストランスレーターとして育成することが可能です。

3.ビジネストランスレーターに必要なスキル

ビジネストランスレーターになるために必須となる資格や学位はありません。ただし、ビジネストランスレーターにはデータサイエンスと現場の双方に関連するスキルが求められます。ビジネストランスレーターに必要とされる主なスキルを4つ紹介します。

3-1.データサイエンスの基礎知識

ビジネストランスレーターは自分でデータ分析を行うわけではなく、プログラミングなどの高度な知識は必要ありません。しかし、データサイエンティストの分析結果を見て、データ内容やデータの分析に用いられた手法などを深く理解する必要があります。そのため、ビジネストランスレーター自身もデータ分析ツールを活用できることが望ましいです。データ分析ツールに自ら触れ、利用方法を学べば、データ分析への理解が深まりビジネストランスレーターとして活躍しやすくなるでしょう。

3-2.現場についての知識

ビジネストランスレーターは、営業部門の状況や抱えている課題などを知っている必要があります。現場を知らないままデータ分析が進んだ場合、見当違いな結果を生み、DXプロジェクトの失敗につながりやすくなります。たとえば、「今後製品Aの売上が伸びる」という情報が分析結果から得られても、製品Aがすでに販売終了していては意味がありません。

そのため、部門の管理職などから話を聞くのはもちろん、場合によってはビジネストランスレーター自身の目で現場の状況を確かめる必要があるでしょう。

3-3.マネジメント能力

ビジネストランスレーターの役割は、技術部門と営業・経営部門の状況や要望などを理解し、双方の仲介役となることです。社内の仲介役として適切に機能するには、ある程度のリーダーシップやマネジメント能力が必要です。

ビジネストランスレーターは、各業務部門のリーダーの補佐役として、それぞれの状況や認識を確認しながらDX推進を円滑に行っていくスキルが必要となります。このスキルは、リーダーのアドバイス役になれる資質とも言い換えられるでしょう。

3-4.コミュニケーション能力

ビジネストランスレーターにとって特に大切な点の1つは、エンジニア・データサイエンティスト・経営幹部・営業の部門長など、各関係者からの信頼です。

ビジネストランスレーターは、技術部門と営業・経営部門の橋渡しを担います。よって、両者にとって「話が通じる存在」であることが不可欠です。両者と問題なく会話ができ、両者に通じる言い方で要望・意見などを伝えられるコミュニケーション能力がビジネストランスレーターには必要になります。

また、ビジネストランスレーターは営業・経営・技術の幅広い部門と接触するため、網羅しきれない知識が多く生まれます。よって、知らない物事について無理に背伸びをせず、素直に尋ね、相手から傾聴するスキルがあると望ましいでしょう。

4.まとめ

ビジネストランスレーターとは、データ分析を担当する技術系の部門と、経営や営業を担当する部署を仲介する仕事です。技術系部門と経営・営業部門を仲介するビジネストランスレーターがいれば、企業はDXを推進しやすくなります。また、ビジネストランスレーターは必ずしもIT人材である必要はなく、幅広い人材がビジネストランスレーターとなれるのもメリットです。ただし、自社の業務に関する知識やマネジメント能力・コミュニケーション能力を求められます。

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